ある市が、住民向けのオンライン申請システムを人間中心設計の考え方で作り直すことにした。 開発の進め方として、最も適切なものはどれか。
正解:ウ
ア住民の要望をアンケートで集め、要望の多い機能から順に作り込んで一度に公開する。
誤り。要望を聞いている点は利用者志向に見えますが、集めているのは 「欲しい機能」であって、住民がどんな場面でどう困っているかという利用状況では ありません。試作を確かめずに一度に公開するため、直す機会も残りません。
イ現行の窓口業務の手順書をもとに必要な機能を洗い出し、公開後に不具合だけを直す。
誤り。出発点が業務の手順であって、使う住民ではありません。窓口で職員が 補っていた分かりにくさは手順書に現れないため、そのまま画面に持ち込まれます。 公開後に直すのは不具合だけで、使いにくさは残ります。
ウ想定する利用者に試作を操作してもらい、結果を要求事項に戻して設計をやり直す。
正解。人間中心設計は、利用状況を調べ、要求事項を決め、解決案を作り、評価する、 という流れを満足できるまで繰り返します。評価の結果を前の段階に戻す点が要で、 一度作って終わりにしません。
エ画面設計の専門家が完成版を点検し、指摘は次の開発の課題として記録しておく。
誤り。評価は行っていますが、完成してからでは直す余地がなく、 結果が今回の設計に戻りません。人間中心設計では、作る途中の段階で評価し、 その場で要求事項や設計案を見直します。評価の中身より時期が問題です。
設計は、一周では終わらない
窓口で職員が「ここは前年の金額を書いてください」と口で補っていた欄は、 手順書には書かれていません。そのまま画面にすると、住民は入力欄の前で手が止まります。 使う人の実際の状況を見て作り、試してもらい、外れていたら設計に戻して作り直す。 この往復を満足できるまで繰り返すのが人間中心設計です。
繰り返す4つの活動
- 利用状況の把握:誰が、どんな場面で、何のために使うのかを調べる
- 要求事項の明示:把握した状況から、満たすべき条件を言葉にする
- 解決案の作成:画面や手続の流れを設計し、試作を作る
- 評価:想定利用者に使ってもらい、要求事項を満たせているか確かめる
4の結果しだいで1〜3のどこへでも戻ります。評価は最後の検収ではなく、 次の周回の入口だと考えると分かりやすくなります。
デザイン思考との違い
| 考え方 | 何のための枠組みか |
|---|---|
| 人間中心設計 | 使う人の状況に合うまで、設計と評価を繰り返す進め方 |
| デザイン思考 | そもそも何を作るべきかを、観察と試作から探る発想の進め方 |
| 業務手順からの設計 | 現行業務のやり方を機能に置き換える進め方 |
両者は重なりますが、人間中心設計は「作るものが決まった後も、使う人に合うまで 直し続ける」ことに軸があります。試作を利用者に確かめさせ、その結果を 設計に戻しているかどうかが、試験では判断の手掛かりになります。