A社は、従業員の育成にかける費用を、抑えるべき経費ではなく企業価値を高める投資と 位置づけ、育成への投資額や人材の多様性を経営指標として管理することにした。 この考え方を表す言葉はどれか。
正解:ア
ア人的資本経営
正解。人材を、使えば減るコストではなく、投資すれば価値が増える資本として 捉える経営の考え方です。育成や配置への投資が中長期の企業価値につながる、 という見方が出発点になっています。
イ企業の社会的責任(CSR)
誤り。企業が利益の追求だけでなく、環境保全や地域社会への貢献など、 社会の一員としての責任を果たす考え方です。従業員への配慮も含みますが、 向き合う相手は社会全体で、人材を投資対象と見る発想とは別のものです。
ウディスクロージャー
誤り。財務状況や経営状況を投資家や取引先へ開示することです。人材に関する 情報も開示の対象になりつつあるため混同しますが、開示は外部へ伝える行為で、 人を資本と捉えて投資する経営の考え方そのものではありません。
エグリーンIT
誤り。IT機器やデータセンタの省電力化など、ITの利用と製造にともなう 環境負荷を下げる取り組みです。同じ経営資源の話でも、扱う対象が 「ヒト」ではなく「モノ・エネルギー」である点が違います。
人を「費用」と見るか「元手」と見るか
同じ研修費でも、削るべき経費と見るか、将来の稼ぐ力を増やす投資と見るかで 打ち手は正反対になります。人的資本経営は後者の立場に立ち、人材を 「投資すれば価値が増える資本」として扱う経営の考え方です。
なぜこの言い方が広まったのか
- 企業の価値のうち、設備のような目に見える資産が占める割合が下がり、 人の知識や技能が競争力を左右するようになった
- 投資家が、育成への投資額や多様性の状況といった人材の情報を、 企業を評価する材料として求めるようになった
- そのため、人材の状況を測って外部に示すこととセットで語られる
従来の人材管理が「限られた資源をいかに効率よく使うか」という発想だったのに対し、 人的資本経営は「増やせる元手にどう投資するか」を考えます。
経営資源に関わる用語の整理
| 用語 | 何に関する考え方か |
|---|---|
| 人的資本経営 | ヒト。人材を投資対象の資本と捉える |
| 企業の社会的責任(CSR) | 社会との関わり。利益以外の責任を果たす |
| ディスクロージャー | 情報。経営や財務の状況を外部へ開示する |
| グリーンIT | モノ・エネルギー。ITの環境負荷を下げる |
試験では「人材を資本として捉え、その価値を最大限に引き出す」という言い回しで 問われます。コストとして抑える対象か、投資して増やす元手か。 そこが見分けどころです。