セキュリティ製品の開発会社が、対策ソフトの検証に使うため、入手した コンピュータウイルスを社外と接続していない解析用の環境で保管している。 刑法の不正指令電磁的記録に関する罪(いわゆるウイルス作成罪)との関係に ついて、最も適切なものはどれか。
正解:エ
ア保管する行為は、理由や目的にかかわらず一律に処罰の対象となる。
誤り。一律に処罰されるなら、対策ソフトの開発も大学での研究もできなくなります。 条文は「正当な理由がないのに」という限定を置いており、手元に置いていること それ自体で成立するわけではありません。
イ社外と接続していない環境であれば、目的にかかわらず対象とならない。
誤り。隔離した環境で扱うことは実務上とても重要ですが、法律上の要件は環境では なく目的と理由です。他人のコンピュータで実行させるつもりで持っていたのなら、 隔離していたかどうかで結論が変わるわけではありません。
ウ研究や検証のための保管でも、事前に警察へ届け出なければ対象となる。
誤り。この罪にそうした届出制度はありません。正当な理由があるかどうかは、 手続を踏んだかではなく、何のために持っているのかという実質で判断されます。 届け出れば保管が許される、という仕組みではない点に注意してください。
エ正当な理由がなく、他人のコンピュータで実行させる目的で保管した場合に対象となる。
正解。取得・保管が処罰されるのは「正当な理由がないのに」「実行の用に供する 目的で」行った場合です。対策ソフトの検証はこの目的に当たらず、正当な理由も あるため、この事例は対象になりません。
「持っていること」だけでは犯罪にならない
不正指令電磁的記録に関する罪は、ウイルスの取得・保管も対象にしています。 ただし条文には二つのしぼりがあります。
- 正当な理由がないのに 行うこと
- 人の電子計算機における実行の用に供する目的で 行うこと
この二つがあるため、ウイルス対策ソフトの開発、検体の解析、大学での研究、 情報セキュリティの教育といった目的で扱う場合は対象になりません。 逆に言えば、何のために持っているのかが決め手になります。
包丁と同じ考え方
料理人が包丁を持ち歩くのと、人を傷つけるつもりで包丁を持ち歩くのとでは 扱いが違います。物そのものが犯罪なのではなく、正当な理由の有無と目的で 線が引かれる、という発想は同じです。
判断に使うもの・使わないもの
| 観点 | 判断に使うか |
|---|---|
| 正当な理由があるか | 使う(条文上の要件) |
| 他人のコンピュータで実行させる目的か | 使う(条文上の要件) |
| 隔離環境で扱っているか | 使わない(実務上は重要だが要件ではない) |
| 警察に届け出たか | 使わない(そうした制度はない) |
試験でウイルスを扱う場面が出てきたら、隔離しているかどうかではなく、 正当な理由と目的があるかを見て判断してください。