A社では、顧客情報を扱うシステムの操作履歴が記録されておらず、誰がいつデータを 持ち出したのかを後から確かめられない状態が続いていた。不正のトライアングルの 3要素のうち、この状態が当てはまるものはどれか。
正解:エ
ア動機。処遇への不満や金銭的な困窮など、不正に踏み出させる事情があること。
誤り。動機は不正に向かう気持ちの側で、本人が置かれた事情から生まれます。 問題文が述べているのは本人の事情ではなく、システムの記録が残らないという 環境の話です。人の側の事情か、環境の側の条件かで分けます。
イ正当化。自分の行為に都合のよい理由をつけ、後ろめたさが薄れていること。
誤り。正当化は「借りているだけだ」「会社も悪い」と自分に言い訳し、 良心の歯止めが外れる心理です。これも本人の内側の話であり、 履歴が残らないという外側の状態を指す要素ではありません。
ウ能力。不正を実行するのに必要な知識や技術を、本人が身につけていること。
誤り。能力は不正のトライアングルの3要素には含まれません。3要素を拡張した 考え方で挙げられることはありますが、問われているのは3要素のどれかです。 まず動機・機会・正当化の3つを押さえます。
エ機会。不正を実行できてしまい、しかも見つかりにくい環境があること。
正解。操作履歴が残らなければ、持ち出しても発覚しません。 物理的にできてしまうことと、やっても気づかれないことの両方が機会にあたります。 3要素のうち、組織が仕組みで最も減らしやすいのがここです。
3つがそろったときに不正は起きる
不正のトライアングルは、不正行為は「動機」「機会」「正当化」の3つがそろった ときに起こる、という考え方です。逆に言えば、どれか1つを取り除けば起きにくくなります。
| 要素 | 中身 | 例 |
|---|---|---|
| 動機 | 不正に向かわせる事情 | 借金、過大なノルマ、処遇への不満 |
| 機会 | 実行できて、しかも発覚しにくい環境 | 記録が残らない、一人で完結する |
| 正当化 | 罪悪感を打ち消す言い訳 | 「あとで返す」「会社が悪い」 |
組織が手を打てるのは主に「機会」
動機は個人の事情に、正当化は本人の心の中に根ざしているため、 組織が直接なくすことは簡単ではありません。これに対して機会は、 仕組みを変えることで確実に減らせます。
- 操作履歴(ログ)を記録し、後から誰が何をしたか追えるようにする
- 一人で最後まで完結させず、別の担当者の確認を挟む
- 必要な人にだけ、必要な範囲の権限を与える
「見られている」と分かっている状態そのものが抑止になる、というのが要点です。
内部統制の職務分掌との関係
一連の業務を複数人に分ける職務分掌は、機会を減らすための具体策にあたります。 不正のトライアングルが「なぜ不正が起きるのか」を説明する理論であるのに対し、 職務分掌は「どう防ぐか」の手段です。試験では、場面が 不正が起きる条件の説明なのか、防ぐ仕組みの名前なのかを読み分けます。