A社は、研究部門で生み出した新素材の試作品を完成させた。しかし、量産設備への 投資と人員の確保のめどが立たず、事業として立ち上げられずにいる。 技術経営(MOT)で、この段階に立ちはだかる壁を表す言葉はどれか。
正解:イ
ア魔の川
誤り。これは基礎研究の成果が製品開発のテーマとして取り上げられず、 研究のままで終わってしまう、研究段階と開発段階の間の壁です。 A社は既に試作品を作り上げているので、この川は渡り終えています。
イ死の谷
正解。試作品はできているのに、量産や販売に必要な資金・人材・体制が そろわず事業化に届かない。開発段階と事業化段階の間にあるこの溝を、 死の谷(デスバレー)と呼びます。
ウダーウィンの海
誤り。これは事業化した製品が、競合他社や既存製品との競争にさらされ、 産業として定着できずに終わる段階の壁です。市場に出た後の話であり、 まだ製品を世に出せていないA社とは段階が一つ違います。
エキャズム
誤り。これはイノベータ理論で、新しもの好きの初期採用者と、 慎重な前期多数派の間にある深い溝を指します。市場に出た製品が 普及していく過程の話で、事業化前の資金や体制の問題ではありません。
技術が世に出るまでに、越える壁は三つ
技術経営(MOT)では、技術が事業になるまでを四つの段階でとらえます。 段階の間にはそれぞれ関門があり、名前が付いています。
研究 →〔魔の川〕→ 開発 →〔死の谷〕→ 事業化 →〔ダーウィンの海〕→ 産業化
- 魔の川 — よい研究成果があっても、製品開発のテーマとして選ばれなければ先に進めない
- 死の谷 — 試作品はできても、量産や販売の投資が付かなければ事業にならない
- ダーウィンの海 — 発売できても、競争を生き抜けなければ産業として残らない
「谷」でつまずく理由
死の谷でつまずくのは、技術がうまくいっていないからとは限りません。 むしろ、設備投資や販売体制といった、研究部門の手には負えない経営判断が 必要になる段階だからです。ここを越えるために外部資金を入れる仕組みが ベンチャーキャピタルであり、社外の技術や資金と組む考え方がオープンイノベーションです。
混同しやすいものとの違い
| 言葉 | どこの壁か |
|---|---|
| 魔の川 | 研究 → 開発 |
| 死の谷 | 開発 → 事業化 |
| ダーウィンの海 | 事業化 → 産業化 |
| キャズム | 普及の途中(初期採用者 → 前期多数派) |
試験では、問題文が「どの段階まで進んでいるか」を必ず書いています。 試作品ができていれば魔の川は越えている、売り出していればダーウィンの海、と順に絞ります。