正解:ウ
各選択肢の解説
ア侵入経路の特定という結果が出ていないので、受託者は報酬を請求できない。
誤り。結果が出て初めて報酬を請求できるのは、仕事の完成を約束する請負契約の考え方です。 この契約は作業の実施に報酬を払う準委任なので、事務を履行していれば、 結果が出なくても報酬を請求できます。
イ結果が出ないことは契約不適合にあたるので、発注者は無償の再調査を請求できる。
誤り。契約不適合を理由に追完(やり直し)を求めるのは、請負契約で引き渡された仕事に不適合があった場面です。 準委任では、完成した仕事の引渡しを約束していないので、この責任の型は当てはまりません。
ウ善良な管理者の注意を尽くして調査していれば、受託者は債務不履行の責任を負わない。
正解。準委任の受託者が負うのは、専門家として求められる注意を払って事務を処理する義務(善管注意義務)です。 その義務を果たしていれば、原因が特定できなくても約束違反にはなりません。
エ準委任契約の受託者は、調査の経過や結果を発注者に報告する義務を負わない。
誤り。民法は、受任者に、求めがあれば処理の状況を報告し、終了後は遅滞なく経過と結果を報告する義務を課しています。 準委任にもこの規定が準用されます。特定できなかったことも含めて報告を受けるのが筋です。
理解を深めるために
約束したのは「結果」か「仕事ぶり」か
病院で手術を受けて、手を尽くしても治らなかったとき、医師に「治らなかったから費用は払わない」とは言えません。 医師が約束したのは、専門家として適切な治療をすることだからです。インシデントの原因調査を 準委任で頼んだときも同じで、受託者が約束しているのは適切な調査という事務の処理であり、 原因の特定という結果ではありません。
民法の定め
準委任は、法律行為でない事務の委託で、委任の規定が準用されます。受託者には次の義務と権利があります。
- 善良な管理者の注意をもって事務を処理する義務(善管注意義務)
- 求めがあれば状況を報告し、終了後は遅滞なく経過と結果を報告する義務
- 事務を履行した後に報酬を請求する権利(途中で終われば、履行の割合に応じて請求できる)
これに対して請負は、仕事の完成を約束し、その結果に報酬を払う契約です。完成した仕事に不適合があれば、 注文者は追完・報酬の減額・損害賠償・解除を求められます。
調査や運用支援のように、結果を事前に約束しにくい業務は準委任で発注されることが多くあります。 発注する担当者としては、結果が出なくても報酬が発生することを前提に、 報告書に何を書いてもらうか(調べた範囲、特定できなかった理由など)を契約時に決めておくことが大切です。 なお、民法には成果に対して報酬を払う型の準委任もありますが、この問題は作業の実施に払う型です。
混同しやすいものとの違い
| 考え方 | 実際の扱い |
|---|---|
| 注意を尽くせば結果が出なくても責任なし | 準委任の善管注意義務 |
| 結果が出なければ報酬なし | 請負の完成義務の考え方 |
| 契約不適合として無償の再調査 | 請負で引き渡された仕事の責任 |
| 報告義務はない | 経過と結果の報告義務がある |
選択肢を読むときは、契約で約束したのが「結果」か「仕事ぶり」かを先に確かめます。