正解:イ
各選択肢の解説
ア部長は社内の管理職で守秘の対象外の相手なので、調査を円滑に進めるため通報者の氏名を伝える。
誤り。公益通報者保護法の守秘義務は、社外への漏えいだけを禁じるものではありません。 社内の管理職に伝えることも「漏らす」に当たります。対象部署の部長は通報された側に近く、 通報者が特定されれば不利益な取扱いにつながるおそれがある、最も伝えてはいけない相手です。
イ通報者を特定させる事項は正当な理由なく漏らせないため伝えず、特定されない形で調査を進める。
正解。公益通報対応業務従事者は、通報者を特定させる事項を正当な理由なく漏らしてはならず(第12条)、 違反には罰則があります。調査は、通報者が誰か推測されない進め方を工夫して行います。
ウ氏名は伏せたうえで、通報者の所属する係と、通報を受けた日時だけを部長に伝える。
誤り。守秘の対象は氏名に限らず、「公益通報者を特定させるもの」全般です。 所属する係や通報の日時は、小さな部署では本人を絞り込む手がかりになります。 氏名さえ伏せればよいと考えるのは、匿名化を名前の削除だけと捉える誤解と同じ構造です。
エ不正が事実と確認されるまでは公益通報に当たらないため、確認までは氏名を伝えてもよい。
誤り。事業者内部への通報は、通報対象事実が生じている、または生じようとしていると思料して行えば足り、 調査で事実と確定してから保護が始まるわけではありません。 確認前に通報者が知られれば、保護の意味がなくなります。
理解を深めるために
窓口の担当者は「誰が言ったか」を守る人
内部通報窓口が信頼されるかどうかは、通報した人が守られるかどうかで決まります。 通報者が誰か漏れる窓口には、次から誰も通報しません。公益通報者保護法は、 窓口で通報を受ける人(公益通報対応業務従事者)に、通報者を特定させる事項の守秘義務を課しています(第12条)。
なぜ部長に伝えてはいけないのか
- 第12条は、公益通報対応業務従事者(だった者を含む)が、業務で知った公益通報者を特定させるものを 正当な理由なく漏らすことを禁じています。違反には30万円以下の罰金があります(第21条)
- 守秘の対象は氏名だけではありません。所属・日時・通報の書きぶりなど、組み合わせると本人が絞り込める情報も含みます
- 事業者内部への通報は、通報対象事実があると思料して行えば保護の対象になります。調査の結論を待つ必要はありません
従業員が300人を超える事業者には、従事者の指定と、通報に対応する体制の整備が義務づけられています(第11条。300人以下は努力義務)。 問題文の会社は1,200人なので、この窓口はその義務に基づく体制です。 なお、同法の改正法が2026年12月1日に施行される予定です。この問題は現行法の第12条の範囲で書いています。
混同しやすいものとの違い
| 対応 | 扱い |
|---|---|
| 特定させる事項を伝えずに調査する | 従事者の守秘義務に沿う |
| 社内の管理職に氏名を伝える | 社内でも「漏らす」に当たる |
| 氏名を伏せて所属・日時を伝える | 本人を特定させる事項に当たりうる |
| 事実確認までは伝えてよいとする | 内部通報の保護は確認を待たない |
「社内だから」「名前は伏せたから」「まだ事実か分からないから」という理由づけが出てきたら、 その情報で通報者が絞り込めるかどうかに引き戻して考えます。