正解:ア
各選択肢の解説
アベンダー側の業務責任者に優先順位の変更を依頼し、責任者から要員へ指示してもらう。
正解。準委任や請負では、要員に作業の順序や方法を指示するのは雇用主であるベンダー自身です。 発注者は責任者を通じて依頼することで、急ぎの対応と適法な契約関係を両立できます。
イ準委任契約は成果物の完成を約束しない契約なので、要員に直接、作業の順番を指示する。
誤り。完成義務がないことは、指揮命令してよいこととは無関係です。完成義務の有無は請負と準委任を 分ける軸で、誰が要員に指示するかを分ける軸ではありません。発注者が直接指示すれば、 実態は労働者派遣と変わらず、偽装請負と判断されるおそれがあります。
ウ要員本人から直接の指示を受けることへの同意を得たうえで、作業の順番を指示する。
誤り。指揮命令の関係は本人の同意で動かせるものではありません。要員は雇用主であるベンダーの指示で 働いており、発注者が指示できるのは、労働者派遣契約を結んで派遣先になった場合です。 同意を取っても、実態が直接の指揮命令なら偽装請負の問題は残ります。
エ緊急時は発注者が要員に直接指示できると契約書に追記し、そのうえで作業の順番を指示する。
誤り。適法かどうかは契約書の名称や条項ではなく、実際に誰が指揮命令しているかで判断されます。 準委任契約のまま発注者が指示できると書いても、実態は労働者派遣です。 直接指示したいなら、派遣元と労働者派遣契約を結ぶのが筋です。
理解を深めるために
急ぎでも、指示は「窓口」を通す
隣の会社から来てもらっている工事の職人さんに、こちらの社員が直接「先にこっちをやって」と 指示する場面を考えてみます。職人さんの段取りを決めるのは、本来その職人さんを雇っている会社の現場責任者です。 常駐しているIT要員も同じで、準委任や請負の契約では、要員に指示を出すのは雇用主であるベンダーです。
なぜ直接指示してはいけないのか
他社に雇われている労働者に直接指示して働かせる形は、労働者派遣法のもとでは労働者派遣にあたり、 派遣契約を結んだ派遣先として受け入れるのが原則です。派遣の三者関係は次のとおりです。
- 雇用契約: 派遣元と労働者の間
- 労働者派遣契約: 派遣元と派遣先の間
- 指揮命令: 派遣先から労働者へ
準委任や請負では、発注者と要員の間に指揮命令の関係は生じません。それでも発注者が作業の順序や方法を 直接指示していれば、契約の名前にかかわらず実態は派遣と同じで、偽装請負と判断されるおそれがあります。 判断の基準は、厚生労働省の告示(労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準)で、 業務の遂行方法の指示をベンダー自身が行っているかが問われます。
インシデント対応のように急ぐ場面ほど、直接の指示が出やすくなります。常駐要員がいる部門では、 依頼はベンダーの責任者に出すという連絡経路を、平時から決めておくことが担当者の備えになります。
混同しやすいものとの違い
| 対応 | 扱い |
|---|---|
| ベンダーの責任者を通じて依頼する | 準委任のまま適法に優先順位を変えられる |
| 完成義務がないので直接指示する | 完成義務と指揮命令は別の軸 |
| 要員本人の同意を得て直接指示する | 同意で指揮命令の関係は変わらない |
| 契約書に直接指示できると追記する | 条項ではなく実態で判断される |
選択肢に「契約の種類」「本人の同意」「契約書の文言」が出てきたら、実際に誰が指示しているかに引き戻して考えます。