問題 1★★☆

情報セキュリティ担当者が、情報セキュリティリスクの状況と対策の進み具合を 四半期ごとに取締役会へ報告する資料を作っている。コーポレートガバナンスの観点から、 取締役会がこの報告を受ける目的として最も適切なものはどれか。

正解:ウ

各選択肢の解説

  1. ア取締役会が、ファイアウォールの設定など個々の対策の内容を決めて実施するため。

    誤り。これは業務の執行で、経営陣とその下の担当部門が受け持つ部分です。 取締役会も「経営の重要事項を決める場」なので混同しやすいのですが、個々の機器の設定まで 取締役会が決めて実施するわけではありません。執行するか、執行を見張るかで分けます。

  2. イ取締役会が独立した監査人として、対策の有効性について保証を与えるため。

    誤り。対策の有効性を独立した立場で確かめて保証するのは、内部監査や外部の監査人の役割です。 取締役会は監査の結果を受け取る側にはなりますが、取締役会自身が監査人になるわけではありません。 監督する機関と、監督の材料を出す監査とを分けて考えます。

  3. ウ経営陣によるリスクへの対応を監督し、必要に応じて方針の見直しを求めるため。

    正解。コーポレートガバナンスは、経営が健全に行われるよう監視・監督する仕組みです。 取締役会は報告をもとに、経営陣の情報セキュリティリスクへの対応が十分かを確かめ、 足りなければ方針の見直しを求めます。

  4. エ法令違反が起きていないことだけを確かめ、違反がなければ経営陣に任せるため。

    誤り。法令や規範を守ることはコンプライアンスで、コーポレートガバナンスが見る範囲の一部にすぎません。 法令違反がなくても、対策が遅れて事業が止まる危険があれば、それも監督の対象です。 「守っているか」だけでなく「経営として十分か」まで見る点で区別します。

理解を深めるために

取締役会は「やる人」ではなく「見張る人」

会社をバスにたとえると、ハンドルを握って運転するのが経営陣、運転が安全かを横で確かめ、 危なければ「ルートを変えよう」と言うのが取締役会です。取締役会は自分でハンドルを握るのではなく、 運転を監督する役回りです。

情報セキュリティでも同じです。担当者が取締役会へ上げる報告は、取締役会が 「経営陣はこのリスクに十分に対応しているか」を判断するための材料になります。

なぜ取締役会に報告するのか

コーポレートガバナンスは、株主などの関係者に代わって経営を監視・監督し、 健全で透明な経営を保つための仕組みです。情報セキュリティリスクは、事業の停止や 信用の失墜につながる経営上のリスクなので、監督の対象に入ります。

  • 経営陣(執行側)は、方針に沿って対策を実行し、その状況を報告する
  • 取締役会(監督側)は、報告をもとに対応が十分かを判断し、足りなければ見直しを求める
  • 内部監査は、独立した立場で対策が機能しているかを確かめ、その結果を監督に役立てる

担当者の報告が「対策をやりました」の列挙だけだと、取締役会は判断できません。 残っているリスクや、追加の判断が要る点を示すことが、監督を機能させる報告になります。

混同しやすいものとの違い

用語 何をするか
コーポレートガバナンス(取締役会の監督) 経営陣の対応を監督し、必要なら方針の見直しを求める
業務の執行 経営陣と担当部門が、対策を決めて実施する
内部監査 独立した立場で、対策が機能しているかを確かめて報告する
コンプライアンス 法令・社内規程・社会の規範に沿って行動する

「実行するのか、実行を監督するのか、監督の材料を出すのか」の3つの立場を分けると、選択肢を見分けられます。

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