正解:エ
各選択肢の解説
ア対象は「業務上知り得た一切の情報」と包括的に書き、漏れがないようにする。
誤り。ガイドラインは、誓約書に書く秘密保持の対象を客観的に特定できる記載にするよう 求めています。広く書けば漏れがなさそうに見えますが、何が秘密か本人も判断できず、 差止めや損害賠償を求める場面で主張が認められにくくなります。
イ退職時の誓約は形だけになりやすいので廃止し、就業規則の定めだけで対応する。
誤り。就業規則の秘密保持義務が退職後も有効になる場合はありますが、ガイドラインでは 誓約書の提出を求めること自体を対策の一つとしています。誓約書は、守るべき情報を 本人に意識させる役割も持つので、就業規則は補うものであって代わりにはなりません。
ウ退職者全員に、業種や期間を限らない競業避止義務も併せて誓約させる。
誤り。競業避止義務を課すことはあり得ますが、ガイドラインは職業選択の自由を 侵害しないよう範囲を適切に設定するよう求めています。範囲を限らない義務は 無効と判断されるおそれがあり、情報の保護にも役立ちません。
エ入社時や異動時、重要プロジェクトの開始・終了時にも提出を求めるようにする。
正解。退職時の誓約は、会社との関係によっては拒否されることがあります。 ガイドラインは、入社時以外にも適切な機会に誓約を求め、繰り返し意識付けるよう勧めています。
理解を深めるために
誓約は「辞めるときに一度」では間に合わない
退職が決まった人に、その日になって初めて「秘密を守ると約束してください」と頼む場面を 考えてみてください。会社との関係がこじれていれば、署名を断られることもあります。 しかも、本人はすでに何年も重要な情報に触れてきた後です。約束は、情報に触れる 前から、節目ごとに取り交わしておくものです。
ガイドラインが求める誓約書の運用
IPAの「組織における内部不正防止ガイドライン」(第5版、2022年4月改訂)は、 人的管理の対策として秘密保持誓約書の運用を次のように示しています。
- 誓約書は、重要情報を守る義務があることを理解させるために提出を求める
- 入社時だけでなく、昇格や配置転換、プロジェクトの開始・終了時など適切な機会に何度も求める
- 退職時の誓約は拒否される可能性があるので、入社時などに結ぶ誓約の秘密保持期間を十分にとる
- 秘密保持の対象となる重要情報は、客観的に特定できるように書く
- 退職予定者とは面談などで在職中にアクセスした秘密情報を確認し、誓約の対象に含める
競業避止義務を併せて結ぶこともありますが、その場合は職業選択の自由に配慮して範囲を絞ります。
混同しやすいものとの違い
| 見直し案 | ガイドラインとの関係 |
|---|---|
| 誓約の機会を入社時・異動時などに広げる | 繰り返しの意識付け、退職時の拒否への備え |
| 対象を包括的に書く | 客観的に特定できる記載が必要 |
| 誓約書をやめて就業規則だけにする | 誓約書の提出を求めることが対策の一つ |
| 無制限の競業避止義務 | 職業選択の自由に配慮し範囲を限る |
人的管理策では「いつ」「何を」約束させるかが問われます。退職時だけ、包括的に、 という運用は、どちらも誓約の効き目を弱めます。