問題 9★★★

サーバ室の入退室に手のひらの静脈パターン認証を導入する。試行運用で、 手のけがや冷えのために本人が拒否される例が一定数あることが分かった。 運用の設計として最も適切なものはどれか。

正解:イ

各選択肢の解説

  1. ア本人が拒否されないよう、照合の判定基準を緩めて一致の度合いが低くても受け入れる。

    誤り。判定基準を緩めると本人拒否率(FRR)は下がりますが、他人受入率(FAR)が上がり、 よく似た他人を通してしまう危険が増えます。不便を解消したい気持ちから選びがちですが、 サーバ室のように他人を通さないことが優先の場所で、守る側の指標を犠牲にするのは逆です。

  2. イ本人が拒否されたときは、ICカードと暗証番号など別の方法で個人を確かめて入室させる。

    正解。本人拒否率は判定基準をどう設定してもゼロにはできないので、拒否されたときの 代替手段を最初から設計しておきます。代替手段でも「誰が入ったか」を個人単位で確かめ、 記録が残ることが条件です。

  3. ウ本人が拒否されたときは、室内にいる社員が内側から扉を開けて入室させる。

    誤り。これは認証を経ずに人を通す運用で、共連れと同じ穴を自分たちで開けることになります。 顔見知りなら大丈夫と考えがちですが、入退室の記録にも残らず、誰がいつ入ったかを 後から確かめられません。代替手段は「個人を確かめる仕組み」であることが要ります。

  4. エ本人が拒否されたときに備え、全員が知っている共通の暗証番号でも解錠できるようにする。

    誤り。共通の暗証番号は、使った人を特定できず、一人から漏れれば部外者でも解錠できます。 代替手段を用意する発想は正しいので選びやすいのですが、本人を確かめる強さが 生体認証より大きく落ちる裏口を作ることになります。

理解を深めるために

本人拒否は「起きるもの」として設計する

生体認証は、指紋や静脈のような体の特徴を使うので、忘れたり貸し借りしたりできない利点があります。 ただし、体の特徴は日によって状態が変わります。手のけが、冷えによる血流の変化、 かざし方のずれなどで、本人でも一致の度合いが下がり、拒否されることがあります。 自動改札でICカードの読み取りに失敗する人がいても、駅員のいる窓口があるから困らない、 というのと同じで、拒否されたときの別ルートを用意しておくのが運用設計です。

なぜ代替手段の「強さ」が問われるのか

  • 本人拒否率(FRR)と他人受入率(FAR)はトレードオフで、判定基準を動かしても両方は下げられない
  • サーバ室のような場所では、他人受入率を低く保つ(判定を厳しめにする)のが基本になる
  • その分、本人拒否は一定の割合で必ず出るので、代替手段が要る
  • 代替手段が弱いと、攻撃者はわざと生体認証に失敗して代替手段の側を狙う

つまり代替手段は、個人を特定でき、記録が残り、強さが大きく落ちないものにします。 ICカードと暗証番号の組合せは、所有と記憶の2要素で個人を確かめられ、入退管理システムに記録も残ります。

混同しやすいものとの違い

対応 本人を確かめられるか 問題点
別の方法(ICカード+暗証番号)で個人を確認 できる なし(記録も残る)
判定基準を緩める できるが甘くなる 他人受入率が上がる
室内の社員が扉を開ける できない 認証を経ない入室で記録も残らない
共通の暗証番号 できない 使った人を特定できず漏れたら誰でも入れる

試験では「本人拒否への対処」が問われたら、判定基準を緩めるのではなく、 同等の強さで個人を確かめる代替手段を用意する、という方向で判断します。

前の問題へ次の問題へ