正解:イ
各選択肢の解説
ア本人が拒否されないよう、照合の判定基準を緩めて一致の度合いが低くても受け入れる。
誤り。判定基準を緩めると本人拒否率(FRR)は下がりますが、他人受入率(FAR)が上がり、 よく似た他人を通してしまう危険が増えます。不便を解消したい気持ちから選びがちですが、 サーバ室のように他人を通さないことが優先の場所で、守る側の指標を犠牲にするのは逆です。
イ本人が拒否されたときは、ICカードと暗証番号など別の方法で個人を確かめて入室させる。
正解。本人拒否率は判定基準をどう設定してもゼロにはできないので、拒否されたときの 代替手段を最初から設計しておきます。代替手段でも「誰が入ったか」を個人単位で確かめ、 記録が残ることが条件です。
ウ本人が拒否されたときは、室内にいる社員が内側から扉を開けて入室させる。
誤り。これは認証を経ずに人を通す運用で、共連れと同じ穴を自分たちで開けることになります。 顔見知りなら大丈夫と考えがちですが、入退室の記録にも残らず、誰がいつ入ったかを 後から確かめられません。代替手段は「個人を確かめる仕組み」であることが要ります。
エ本人が拒否されたときに備え、全員が知っている共通の暗証番号でも解錠できるようにする。
誤り。共通の暗証番号は、使った人を特定できず、一人から漏れれば部外者でも解錠できます。 代替手段を用意する発想は正しいので選びやすいのですが、本人を確かめる強さが 生体認証より大きく落ちる裏口を作ることになります。
理解を深めるために
本人拒否は「起きるもの」として設計する
生体認証は、指紋や静脈のような体の特徴を使うので、忘れたり貸し借りしたりできない利点があります。 ただし、体の特徴は日によって状態が変わります。手のけが、冷えによる血流の変化、 かざし方のずれなどで、本人でも一致の度合いが下がり、拒否されることがあります。 自動改札でICカードの読み取りに失敗する人がいても、駅員のいる窓口があるから困らない、 というのと同じで、拒否されたときの別ルートを用意しておくのが運用設計です。
なぜ代替手段の「強さ」が問われるのか
- 本人拒否率(FRR)と他人受入率(FAR)はトレードオフで、判定基準を動かしても両方は下げられない
- サーバ室のような場所では、他人受入率を低く保つ(判定を厳しめにする)のが基本になる
- その分、本人拒否は一定の割合で必ず出るので、代替手段が要る
- 代替手段が弱いと、攻撃者はわざと生体認証に失敗して代替手段の側を狙う
つまり代替手段は、個人を特定でき、記録が残り、強さが大きく落ちないものにします。 ICカードと暗証番号の組合せは、所有と記憶の2要素で個人を確かめられ、入退管理システムに記録も残ります。
混同しやすいものとの違い
| 対応 | 本人を確かめられるか | 問題点 |
|---|---|---|
| 別の方法(ICカード+暗証番号)で個人を確認 | できる | なし(記録も残る) |
| 判定基準を緩める | できるが甘くなる | 他人受入率が上がる |
| 室内の社員が扉を開ける | できない | 認証を経ない入室で記録も残らない |
| 共通の暗証番号 | できない | 使った人を特定できず漏れたら誰でも入れる |
試験では「本人拒否への対処」が問われたら、判定基準を緩めるのではなく、 同等の強さで個人を確かめる代替手段を用意する、という方向で判断します。