正解:エ
各選択肢の解説
ア量子コンピュータ上で暗号化と復号の計算を行う方式。
誤り。PQCは今使っている普通のコンピュータで動く暗号です。「量子」という 言葉から量子コンピュータを使う技術だと誤解されがちですが、量子コンピュータに 「耐える」暗号であって、量子コンピュータで「動かす」暗号ではありません。
イ光の粒子の性質を使って鍵を届け、盗聴を検知する方式。
誤り。これは量子鍵配送(QKD)の説明です。量子力学の性質を使うため専用の 通信設備が必要で、数学的な問題の難しさに頼るPQCとは仕組みが違います。 どちらも量子時代への備えなので混同しやすい組合せです。
ウRSA暗号の鍵を長くして、解読に時間がかかるようにした方式。
誤り。量子コンピュータは素因数分解を効率よく解ける可能性があるため、 RSA暗号の鍵を長くしても根本的な対策になりません。根拠にしている数学的問題 そのものを、量子コンピュータでも解きにくいものに替える必要があります。
エ量子コンピュータでも解きにくいと考えられる数学的問題に基づく方式。
正解。PQCは、素因数分解のように量子コンピュータで解かれるおそれのある 問題を避け、量子コンピュータでも効率よく解けないと考えられる問題に 安全性の根拠を置いた暗号です。
理解を深めるために
錠前の壊し方が見つかったら、錠前の仕組みごと替える
RSA暗号は「大きな数の素因数分解は時間がかかりすぎて解けない」ことを頼りにしています。 ところが、量子コンピュータにはこの素因数分解を効率よく解く計算方法が知られています。 十分な性能の量子コンピュータが実用化されれば、今の公開鍵暗号は安全の前提を失います。
そこで、量子コンピュータを使っても効率よく解けないと考えられる別の数学的問題に 乗り換えるのが耐量子計算機暗号(PQC)です。錠前を頑丈にするのではなく、 壊し方が知られていない別の構造の錠前に替えるイメージです。
なぜ今から移行が検討されるのか
- PQCは普通のコンピュータとソフトウェアで動くので、今の通信の仕組みに組み込める
- 暗号の切り替えには、製品やシステムの更新を含めて長い年月がかかる
- 今盗まれた暗号文が、将来の量子コンピュータで解読されるおそれもある
米国の標準化機関NISTは2024年にPQCの最初の標準を公表しており、 各国で移行の準備が進められています。
混同しやすいものとの違い
| 用語 | 何をするものか |
|---|---|
| 耐量子計算機暗号(PQC) | 量子コンピュータでも解きにくい数学的問題に基づく暗号。普通のコンピュータで動く |
| 量子鍵配送(QKD) | 量子力学の性質で鍵を届け、盗聴を検知する。専用の設備が要る |
| RSA暗号の鍵の長期化 | 従来のコンピュータへの対策。量子コンピュータには根本的に効かない |
| 量子コンピュータ | PQCが「耐える」相手。PQCを動かす機械ではない |
試験では「PQC=量子コンピュータに耐える暗号」の意味が問われます。 「量子を使う」のか「量子に耐える」のかで見分けましょう。