正解:エ
各選択肢の解説
ア取引先は別の会社であり、自社の従業員の問題ではないため対応を見送る。
誤り。「人権への配慮は自社の従業員まで」という典型的な誤解です。ビジネスと人権では、 自社の事業や製品に結び付いている限り、取引先など供給網(サプライチェーン)で起きている 人権侵害にも企業が向き合う責任があるとされます。
イ指摘を受けた時点で直ちに取引を打ち切り、自社との関係を断つ。
誤り。関係を断てば自社のリスクは減りそうに見えますが、A社の目が届かなくなり、 工場の経営が悪化して働く人が職を失うなど、人権への悪影響がかえって深刻になりかねません。 政府のガイドラインでも、取引停止は最後の手段と位置付けられています。
ウ取引先から法令を守るという誓約書を受け取り、それで対応済みとする。
誤り。誓約書は取組みの入口にはなりますが、書面を受け取っただけでは実態が 改善されたかが分かりません。人権への取組みは、実態を確かめ、改善し、 その効果を評価し続ける継続的な活動として求められます。
エ取引先と協力して実態を調べ、改善に取り組み、その経過を説明する。
正解。これが人権デュー・ディリジェンスの考え方です。サプライチェーンを含めて 人権への負の影響を特定し、防止・軽減に取り組み、その実効性を確かめて外部に説明します。
理解を深めるために
「うちの社員ではない」では済まない
スマートフォンや衣料品の部品・原料は、国をまたぐ多くの会社を経て届きます。 その途中の工場で強制労働や児童労働があれば、完成品を売る企業も、その人権侵害から 利益を得ていることになります。
「ビジネスと人権」は、企業が自社の従業員だけでなく、サプライチェーン全体で人権を尊重する 責任を負うという考え方です。国際的な出発点は、2011年に国連人権理事会で支持された 「ビジネスと人権に関する指導原則」です。日本でも2022年9月に政府が 「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を策定しています。
人権デュー・ディリジェンスの流れ
責任を果たす中心的な手段が人権デュー・ディリジェンスです。ガイドラインでは次の流れで示されています。
- 負の影響の特定・評価 — 自社や取引先で、どのような人権侵害が起きている(起き得る)かを把握する
- 負の影響の防止・軽減 — 取引先と協力して是正を働きかける
- 取組みの実効性の評価 — 改善が本当に進んでいるかを確かめる
- 説明・情報開示 — 取組みの内容を社外に説明する
一度きりではなく、繰り返し回す継続的な取組みである点が大切です。 取引停止は、働きかけても改善が見込めない場合などに検討する最後の手段とされています。
選択肢の対応の違い
| 対応 | 評価 |
|---|---|
| 実態を調べ、改善し、経過を説明する | 人権デュー・ディリジェンスそのもの |
| 別会社だとして対応を見送る | 責任の範囲をサプライチェーンまで広げていない |
| 直ちに取引を打ち切る | 悪影響を深刻にするおそれがあり、最後の手段 |
| 誓約書を受け取って終える | 実態の確認と継続的な評価が欠けている |
「サプライチェーンまで含む」「特定・防止・軽減」「継続的に説明する」がそろった選択肢を選びます。