正解:ウ
各選択肢の解説
ア発注と検収を同じ担当者が行えないよう、職務分掌を新たに定めれば防げた事態である。
誤り。職務分掌はすでに設けられていました。分けていたのにすり抜けられたのは、 分けた2人が手を組んだからです。「分掌が無かった」と捉えると原因を取り違え、 同じ共謀を次も見逃します。
イ内部統制は整備すれば不正を確実に防げるので、統制の仕組みを一から作り直す必要がある。
誤り。内部統制が与えるのは目的の達成についての合理的な保証で、絶対的な保証ではありません。 どれだけ作り直しても共謀や判断の誤りの可能性はゼロにならないため、 「確実に防げる」前提で作り直すと、また同じ穴を見落とします。
ウ共謀による無効化は内部統制の限界にあたり、分掌に加えて後から発見する仕組みで補う。
正解。複数の担当者の共謀は、職務分掌を無効にしうる内部統制の限界の典型です。 限界を前提に、取引先への残高確認や入庫記録との照合など、すり抜けた不正を後から見つける統制を重ねます。
エ共謀は内部統制で扱えない問題なので、統制は今のままにして倫理教育だけで対応する。
誤り。限界があることは、統制を見直さなくてよい理由になりません。 倫理教育は統制環境を支える取組みとして大切ですが、それだけでは起きた不正を見つけられません。 発見のための統制を組み合わせる必要があります。
理解を深めるために
内部統制は「鍵」であって「金庫室」ではない
玄関の鍵を2本に分け、2人がそろわないと開かないようにしても、2人が示し合わせれば扉は開きます。 職務分掌はこの「鍵を分ける」仕組みです。1人の不正やうっかりミスには強い一方、 分けた人どうしが手を組むと効かなくなるという弱点を、最初から抱えています。
内部統制の限界とは
内部統制は、目的の達成について合理的な保証を与えるものとされています。 「かなりの確からしさで達成できる」という意味で、100%の保証ではありません。 有効に働かなくなる場面として、次のようなものが挙げられています。
- 判断の誤りや不注意
- 複数の担当者による共謀
- 当初想定していなかった環境の変化や、定型から外れた取引
- 経営者が不当な目的で内部統制を無視したり無効にしたりすること
また、統制には費用がかかるため、便益と比べてどこまで整えるかを決める必要があります。 限界を知ったうえで、防ぐ統制(分掌・承認)と、後から見つける統制(照合・確認・モニタリング)を組み合わせるのが実務の考え方です。
混同しやすい捉え方との違い
| 捉え方 | 何が違うか |
|---|---|
| 共謀は内部統制の限界 | 分掌があってもすり抜けうると認め、発見の統制で補う |
| 分掌が無かったのが原因 | 分掌はあった。原因の取り違え |
| 整備すれば確実に防げる | 合理的な保証であって絶対的な保証ではない |
| 統制では扱えないので教育だけ | 限界は統制を放棄する理由にならない |
「仕組みがあったのに起きた」場面では、仕組みの不在ではなく限界の問題として捉え、別の統制で補えるかを考えます。