正解:エ
各選択肢の解説
ア登録担当者に、承認に回す前に入力した内容を自分でもう一度確かめるよう求める。
誤り。これは本人による見直し(セルフチェック)です。入力ミスを減らす効果はありますが、 確かめるのが同じ人なので、1人で登録から承認まで済ませられる状態は変わりません。 職務分掌は「別の人の目」を通すことで成り立ちます。
イ承認操作の記録を残し、内部監査で年に1回、登録者と承認者の組合せを点検する。
誤り。これは後から見つけるための統制で、分掌を補う手段としては有効です。 ただ、点検までの最長1年は1人で支払を通せる状態が続きます。 権限の穴をふさがずに発見だけに頼るのは、分掌を戻したことになりません。
ウ登録担当者のIDのパスワードを長く複雑にし、定期的に変更するよう義務付ける。
誤り。これは他人がIDを使うなりすましへの対策です。今回の問題は、 正しい本人が自分のIDで登録も承認もできてしまうことなので、 認証を強くしても解消しません。
エ権限の設定を見直し、登録の権限と承認の権限を同じIDに持たせないようにする。
正解。規程で分けていても、システムが1つのIDに両方を許していれば分掌は形だけになります。 権限の設定そのもので両立できないようにして、規程どおりの分掌をシステム上でも担保します。
理解を深めるために
規程で分けても、システムが許せば1人で通る
金庫の鍵を2人に分けて持たせる決まりがあっても、合鍵が1本で両方の錠を開けられるなら、 決まりは意味を失います。システムの権限はこの「合鍵」にあたります。 規程上は登録と承認を分けていても、1つのIDに両方の権限が付いていれば、1人で支払を完結できます。
なぜ権限の設定で分けるのか
職務分掌は、一連の業務を複数の担当者に分け、互いの仕事を確かめ合うことで、 誤りや不正を1人の判断だけで通さないための仕組みです。業務がシステムの上で進む場合、 その分担は権限の設定によって初めて実際に働きます。
- 規程: 誰が何をしてよいかを決める
- 権限の設定: 決めたとおりにしか操作できないようにする
- 後からの点検: 設定が崩れていないか、すり抜けがないかを確かめる
システムの更新や人事異動のときは、権限が一律に付与されたり、古い権限が残ったりしやすい時期です。 権限を付け直したら、規程の分担と突き合わせることが欠かせません。
混同しやすい対策との違い
| 対策 | 何に効くか |
|---|---|
| 登録と承認の権限を分ける | 1人で業務を完結できる状態そのものをなくす |
| 本人による再確認 | 入力ミスを減らす。確かめるのは同じ人 |
| 操作記録の定期点検 | すり抜けを後から見つける。分掌の代わりではなく補完 |
| パスワードの強化 | 他人によるなりすましを防ぐ。本人の権限過多には効かない |
「規程はあるのに1人でできてしまう」場面では、規程を周知し直すより先に、システムの権限が規程と合っているかを確かめます。