正解:イ
各選択肢の解説
ア内部統制の限界は人の判断の誤りや共謀から生じるので、人を介さないAIの判定には当てはまらない。
誤り。判断の誤りや共謀は限界の一部にすぎません。想定していなかった環境の変化や非定型的な取引にも 統制は必ずしも対応しないとされており、AIの判定も、学習した範囲の外では見逃しや誤判定が起こりえます。
イAIは過去の傾向から判定するので、新しい手口や非定型の精算を見逃しうる。人の確認を残し判定も検証する。
正解。内部統制は想定外の変化や非定型的な取引には必ずしも対応しないという限界があり、AIも例外ではありません。 人の確認を残し、見逃しや誤判定がないかを定期的に確かめることで限界を補います。
ウ判定の仕組みはAIの提供会社の責任範囲なので、自社は判定結果を受け入れ、問題が出たら改善を求めればよい。
誤り。業務を外部のサービスに任せても、その業務に係る内部統制の責任は委託した自社にあります。 判定の結果を自社で確かめないまま受け入れれば、見逃しに気づく手段がなくなります。
エ全件を同じ基準で調べられ費用も下がるので、どこまで統制を整えるかを費用と便益で比べる必要はない。
誤り。内部統制は費用と便益を比べたうえで整備・運用するものとされ、これも限界の一つです。 費用が下がっても比べる必要はなくならず、人の確認を残す費用と、見逃しによる損失とを比べて決めます。
理解を深めるために
AIは「過去に見たもの」を見つけるのが得意
過去の不正事例から学んだAIは、これまでと似た手口を素早く大量に見つけられます。 一方で、学習したことのない新しい手口や、めったに起きない種類の精算は、 **AIにとっても「想定していなかったもの」**です。全件を調べていても、見るための物差しが過去のものなら、 物差しの外にあるものは見逃しえます。
内部統制の限界とは
金融庁の基準では、内部統制は目的の達成について合理的な保証を得るためのもので、 次のような限界があるとされています。
- 判断の誤り、不注意、複数の担当者による共謀によって有効に機能しなくなる場合がある
- 当初想定していなかった組織内外の環境の変化や非定型的な取引等には、必ずしも対応しない場合がある
- 費用と便益の比較衡量のもとで整備・運用される
- 経営者が不当な目的のために内部統制を無視ないし無効にすることがある
自動化された統制であっても、無効化のリスクを完全に防ぐことは困難で、 過信しないという視点が大切です。 AIで点検を自動化しても限界は消えず、人による確認や判定結果の検証で補う必要があります。
混同しやすい考え方との違い
| 考え方 | 何が違うか |
|---|---|
| 想定外・非定型に対応しきれないので人の確認と検証を残す | 限界を前提に別の統制で補う |
| 限界は人に由来するのでAIには無い | 想定外の変化への限界はAIにも当てはまる |
| 判定は提供会社の責任 | 委託しても統制の責任は自社にある |
| 費用が下がれば比較は不要 | 費用と便益の比較は常に求められる |
統制を自動化する場面では、「自動化で何が良くなるか」と同時に「物差しの外にあるものを誰が見るか」を問います。