正解:イ
各選択肢の解説
ア来訪者には会議室までの通行用カードを貸し出し、執務エリアの扉をカード認証にして入退の記録を残す。
誤り。物理的入退の管理策で、誰がいつ出入りしたかは記録できます。ただし、 来訪者に通行用カードを渡す時点で、執務エリアの中を通ることを認めています。 入退の管理は「入れる人を絞る」対策なので、入れた人が席の間を通る配置の問題は残ります。
イ会議室は受付の近くに移し、執務エリアは壁と施錠できる扉で区切って、来訪者が通らない配置にする。
正解。物理的セキュリティ境界の考え方です。情報を扱う区域を境界で囲み、 来訪者が使う区域はその外に置けば、来訪者がそもそも執務エリアに入る理由がなくなります。
ウ執務エリアでクリアデスク・クリアスクリーンを徹底し、通路から見える机上に書類を残さない。
誤り。クリアデスク・クリアスクリーンは、離席時や退社時に机上と画面へ情報を 残さない管理策です。来訪者が通るのは社員が席で仕事をしている最中なので、 使用中の書類や画面が見えることまでは防げません。配置を直す代わりにはなりません。
エ執務エリアの通路に監視カメラを設置し、来訪者の行動を録画して後から確認できるようにする。
誤り。監視カメラは、起きたことを見つけたり後から確かめたりする対策です。 来訪者が席の間を通るときに画面や書類が目に入ること自体は止められません。 見られた後に分かる対策と、見られない配置にする対策の違いです。
理解を深めるために
鍵や記録より先に「線の引き方」を決める
家に来たお客さんを、寝室を通らないと行けない部屋に通すことはしません。 玄関の近くに応接間を置けば、鍵をかけるまでもなく、お客さんは寝室を見ずに帰れます。 オフィスでも同じで、来訪者が使う場所と情報を扱う場所を最初から分けて配置するのが、 物理的セキュリティ境界の考え方です。
なぜ配置の見直しが先なのか
JIS Q 27002 の物理的管理策は、情報や機器がある区域を守るためのものです。 その中で、境界を定めることは土台にあたります。
- 物理的セキュリティ境界: 情報を扱う区域を壁や扉で囲み、どこからが守る区域かを決める
- 物理的入退: 決めた境界の出入口で、入れる人を確かめて絞る
- クリアデスク・クリアスクリーン: 席を離れるときに机上と画面へ情報を残さない
問題の配置は、来訪者を境界の内側に招き入れる設計になっています。この状態で入退の管理や 監視を強めても、「入れてよい人」として来訪者が執務エリアを通ることは変わりません。 境界の外に会議室を置けば、入退の管理は社員だけを相手にすればよくなります。
混同しやすいものとの違い
| 対策 | 何を防ぐか | この場面で足りない点 |
|---|---|---|
| 物理的セキュリティ境界 | 来訪者を情報のある区域に入れない | (配置そのものを直す) |
| 物理的入退 | 権限のない人の出入り | 来訪者を通す前提が残る |
| クリアデスク・クリアスクリーン | 不在時の机上・画面からの漏えい | 使用中の画面・書類は見える |
| 監視カメラ | 起きたことの発見・確認 | 見られること自体は止められない |
場面の問題が「入ってはいけない人が入る」のか「入ってよい人の通り道に情報がある」のかで、 打つ手が変わります。後者なら、鍵や記録ではなく境界の引き方から直します。