問題 3★★★

部員が自ら報告した不審メールの件数を部署別に集計したところ、営業部が最多だった。 営業部は昨年から報告を奨励している。「営業部は狙われやすい」と結論づける前に、 担当者がとる対応として最も適切なものはどれか。

正解:エ

各選択肢の解説

  1. ア結論に沿って、営業部だけに標的型メールへの対策を強化する。

    誤り。集計の数字をそのまま受け取った対応です。報告件数は、届いたメールの数と、 部員が報告する習慣の両方で決まります。営業部が多いのは報告を奨励した結果かもしれず、 届いた数の差を示しているとは限りません。偏りを確かめる前に対策を絞ると、 報告の少ない部署の被害を見落とします。

  2. イ部署ごとの人数で件数を割り、1人当たりの報告件数で比べ直す。

    誤り。部署の規模の違いはこれで補正できますが、報告する習慣の差は1人当たりにしても 残ります。奨励された営業部の部員は、他部署の部員より報告しやすいからです。 割り算で直せるのは人数の偏りで、データの集まり方の偏りは直せません。

  3. ウ集計期間を過去3年分に延ばし、件数を増やして傾向を見る。

    誤り。件数を増やすと偶然のばらつきは小さくなりますが、集め方そのものの偏り (統計的バイアス)は消えません。しかも奨励を始めた昨年を境に報告の習慣が変わっているので、 期間を延ばすと別の条件のデータが混ざります。

  4. エ報告に頼らないメールサーバの検知記録などで、部署ごとの受信数を確かめる。

    正解。報告件数は「報告した人の数」に左右され、届いた数を正しく表していない おそれがあります。部員の行動に左右されない記録と突き合わせれば、 偏りがどれだけあるかを確かめられます。

理解を深めるために

「報告された数」は「起きた数」ではない

お客様アンケートで「ご意見箱」の投書が多い店は、不満が多い店とは限りません。 投書しやすい雰囲気の店ほど、声が集まるからです。不審メールの報告件数も同じで、 届いた数ではなく、報告された数を数えています。営業部が報告を奨励していれば、 同じ数のメールが届いても営業部の件数だけが多く出ます。

データの集め方で生じる偏り

データの集め方が原因で、結果が一定の方向にずれることを統計的バイアスといいます。 偶然のばらつきと違い、次のような性質があります。

  • 件数を増やしても、期間を延ばしても小さくならない
  • 人数で割るなどの補正では、補正した要因以外の偏りが残る
  • 確かめるには、集め方が異なる別のデータと比べる

この場面では、メールサーバやメールセキュリティ製品の検知記録が、部員の報告習慣に 左右されないデータにあたります。両者を比べれば、営業部の多さが「届いた数」の差なのか 「報告の習慣」の差なのかを切り分けられます。

情報セキュリティの担当者は、インシデント件数、訓練の開封率、点検の結果など、 集計した数字をもとに対策の重点を決める場面が多くあります。数字が「何を数えたものか」を 確かめずに使うと、報告が少ない、つまり気付けていない部署を後回しにしてしまいます。

混同しやすいものとの違い

用語 何が偏っているか 増やせば消えるか
統計的バイアス データの集め方(この場面では報告の習慣) 消えない
標本誤差 たまたま選ばれたデータのばらつき 件数を増やすと小さくなる
認知バイアス データを読む人の思い込み・先入観 データではなく判断する側の問題
規模の違い 部署の人数の差 1人当たりに直せば補正できる

「件数を増やす」「人数で割る」で片づく偏りかどうかを見分けるのが要点です。 集め方に由来する偏りは、集め方の違う別のデータで確かめます。

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