正解:エ
各選択肢の解説
ア結論に沿って、営業部だけに標的型メールへの対策を強化する。
誤り。集計の数字をそのまま受け取った対応です。報告件数は、届いたメールの数と、 部員が報告する習慣の両方で決まります。営業部が多いのは報告を奨励した結果かもしれず、 届いた数の差を示しているとは限りません。偏りを確かめる前に対策を絞ると、 報告の少ない部署の被害を見落とします。
イ部署ごとの人数で件数を割り、1人当たりの報告件数で比べ直す。
誤り。部署の規模の違いはこれで補正できますが、報告する習慣の差は1人当たりにしても 残ります。奨励された営業部の部員は、他部署の部員より報告しやすいからです。 割り算で直せるのは人数の偏りで、データの集まり方の偏りは直せません。
ウ集計期間を過去3年分に延ばし、件数を増やして傾向を見る。
誤り。件数を増やすと偶然のばらつきは小さくなりますが、集め方そのものの偏り (統計的バイアス)は消えません。しかも奨励を始めた昨年を境に報告の習慣が変わっているので、 期間を延ばすと別の条件のデータが混ざります。
エ報告に頼らないメールサーバの検知記録などで、部署ごとの受信数を確かめる。
正解。報告件数は「報告した人の数」に左右され、届いた数を正しく表していない おそれがあります。部員の行動に左右されない記録と突き合わせれば、 偏りがどれだけあるかを確かめられます。
理解を深めるために
「報告された数」は「起きた数」ではない
お客様アンケートで「ご意見箱」の投書が多い店は、不満が多い店とは限りません。 投書しやすい雰囲気の店ほど、声が集まるからです。不審メールの報告件数も同じで、 届いた数ではなく、報告された数を数えています。営業部が報告を奨励していれば、 同じ数のメールが届いても営業部の件数だけが多く出ます。
データの集め方で生じる偏り
データの集め方が原因で、結果が一定の方向にずれることを統計的バイアスといいます。 偶然のばらつきと違い、次のような性質があります。
- 件数を増やしても、期間を延ばしても小さくならない
- 人数で割るなどの補正では、補正した要因以外の偏りが残る
- 確かめるには、集め方が異なる別のデータと比べる
この場面では、メールサーバやメールセキュリティ製品の検知記録が、部員の報告習慣に 左右されないデータにあたります。両者を比べれば、営業部の多さが「届いた数」の差なのか 「報告の習慣」の差なのかを切り分けられます。
情報セキュリティの担当者は、インシデント件数、訓練の開封率、点検の結果など、 集計した数字をもとに対策の重点を決める場面が多くあります。数字が「何を数えたものか」を 確かめずに使うと、報告が少ない、つまり気付けていない部署を後回しにしてしまいます。
混同しやすいものとの違い
| 用語 | 何が偏っているか | 増やせば消えるか |
|---|---|---|
| 統計的バイアス | データの集め方(この場面では報告の習慣) | 消えない |
| 標本誤差 | たまたま選ばれたデータのばらつき | 件数を増やすと小さくなる |
| 認知バイアス | データを読む人の思い込み・先入観 | データではなく判断する側の問題 |
| 規模の違い | 部署の人数の差 | 1人当たりに直せば補正できる |
「件数を増やす」「人数で割る」で片づく偏りかどうかを見分けるのが要点です。 集め方に由来する偏りは、集め方の違う別のデータで確かめます。