正解:ウ
各選択肢の解説
ア同僚は社内の人間で社外への漏えいにはならないので、他言しないよう念を押して伝える。
誤り。秘密の保持を「社外に出さないこと」と狭く取る誤解です。社内であっても、監査で知った情報を 監査と関係のない人に伝える正当な理由はありません。社内か社外かではなく、開示の理由があるかで判断します。
イ監査はすでに終わっており、守秘の対象は監査の期間中に限られるので、求めに応じて伝える。
誤り。守秘の義務に期限があるという誤解です。監査が終わっても、監査で知り得た情報の性質は変わりません。 監査人の秘密の保持は、業務の最中だけでなく終わった後も続きます。
ウ監査で知り得た情報は正当な理由なく他に漏らさないものなので、依頼を断る。
正解。監査人の倫理の1つである秘密の保持です。監査で見た情報は監査のために開示されたもので、 監査と関係のない同僚に伝える正当な理由はありません。
エ同僚が昇格の当事者でないことを確かめ、利害関係が無いと分かった場合に限って伝える。
誤り。利害関係の有無を気にするのは、監査人の客観性(偏りのない判断)の考え方です。 客観性は監査人自身の判断を歪めないための原則で、相手に利害が無ければ情報を渡してよいという意味ではありません。
理解を深めるために
監査人は「見せてもらう立場」にある
監査を受ける部門は、監査人を信頼して、ふだんは外に出さない記録まで見せます。 人事の評価、取引条件、アクセスログ。監査人がそれを監査の外で話すなら、次から誰も記録を出さなくなり、 監査そのものが成り立たなくなります。
情報セキュリティの担当者が内部監査に加わると、自部門の同僚から気軽に聞かれる場面が出てきます。 監査で知った情報は、監査のために預かったものだと考えると、断る理由がはっきりします。
監査人の倫理の4つの原則
経済産業省のシステム監査基準(令和5年改訂)は、基準の本体より前に「監査人の倫理」を置き、 監査人が守る原則として次の4つを挙げています。
- 誠実性: 正直に、公正に業務を行う
- 客観性: 偏りや利害に左右されずに判断する
- 監査人としての能力及び正当な注意: 必要な知識と技能を持ち、注意を尽くして監査する
- 秘密の保持: 業務上知り得た情報を正当な理由なく開示せず、自分の利益にも使わない
秘密の保持は、相手が社内でも、監査が終わった後でも変わりません。 「正当な理由」は、法令に基づく求めや、監査報告書で依頼者に報告する場合のように、監査の目的や法令に沿ったものを指します。 同僚の興味は、これに当たりません。
混同しやすいものとの違い
| 考え方 | 中身 |
|---|---|
| 秘密の保持 | 知り得た情報を正当な理由なく開示しない。社内・監査後も同じ |
| 客観性 | 監査人自身が偏りなく判断する。相手に利害があるかどうかの話ではない |
| 「社外でなければよい」 | 誤解。社内でも監査と関係のない人への開示は理由が無い |
| 「監査が終われば対象外」 | 誤解。守秘に期限は無い |
場面で問われたら、「その開示に、監査や法令に基づく理由があるか」を確かめると見分けられます。