問題 1★★☆

小売店を運営する会社の情報セキュリティ担当者が、店舗の従業員による不正の報告を受けた。 従業員はレジの決済端末に読取装置を取り付けて、顧客のクレジットカードの磁気情報を写し取り、 その情報を書き込んだ偽のカードを作っていた。この行為に当たる刑法上の罪として最も適切なものはどれか。

正解:ウ

各選択肢の解説

  1. ア電子計算機使用詐欺罪

    誤り。これは、人の事務処理に使う電子計算機に虚偽の情報や不正な指令を与え、 財産上の不法な利益を得る罪です。偽カードは後で利益を得る道具になるので結び付けがちですが、 この場面で問われているのは利益を得る行為ではなく、カードの記録を作る行為です。

  2. イ電子計算機損壊等業務妨害罪

    誤り。これは、電子計算機やそのデータを壊したり不正な指令を与えたりして動作を狂わせ、 業務を妨害する罪です。決済端末に装置を付けた点で連想しやすいのですが、端末は正常に 動いており、業務が妨害されたわけではありません。

  3. ウ支払用カード電磁的記録不正作出等罪

    正解。クレジットカードやキャッシュカードを構成する電磁的記録を不正に作る行為は、 刑法の支払用カード電磁的記録に関する罪で処罰されます。いわゆるスキミングで 偽カードを作る行為が典型です。

  4. エ不正指令電磁的記録に関する罪

    誤り。これは、利用者の意図に反する動作をさせるプログラム(ウイルスなど)を 作成・提供・供用・取得・保管する罪で、通称はウイルス作成罪です。ここで使われたのは 磁気情報を読み取る装置で、不正な指令を与えるプログラムではありません。

理解を深めるために

カードの中身を「偽造」する罪

クレジットカードやキャッシュカードの磁気ストライプやICには、決済や引出しに使う情報が 電磁的記録として入っています。お札を偽造すると通貨偽造の罪になるように、 カードの中の記録を勝手に作る行為にも、専用の罪が用意されています。 それが刑法の 「支払用カード電磁的記録に関する罪」です。

何が処罰されるのか

刑法の第18章の2にまとまっていて、偽カードを作る前後の行為まで広く押さえています。

  • 人の財産上の事務処理を誤らせる目的で、支払用カードを構成する電磁的記録を不正に作る(不正作出)
  • 不正に作った記録を使う(供用)、そのカードを譲り渡す・貸し渡す・輸入する
  • そのカードを同じ目的で持っている(所持)
  • 偽カードを作る目的でカードの情報を取得する・保管する、器械を準備する(準備)

つまり、この従業員が偽カードを作る前に磁気情報を写し取った段階でも、作る目的があれば 準備の罪として処罰の対象になります。 決済端末に見慣れない装置が付いていないかを点検するのは、 こうした被害を早い段階で止めるためです。

混同しやすいものとの違い

罪 何に着目した罪か
支払用カード電磁的記録不正作出等罪 支払用カードの記録を不正に作る・使う・準備する
電子計算機使用詐欺罪 電子計算機に虚偽の情報を与えて財産上の不法な利益を得る
電子計算機損壊等業務妨害罪 電子計算機の動作を狂わせて業務を妨害する
不正指令電磁的記録に関する罪 意図に反する動作をさせるプログラムを作る・使う・持つ
電磁的記録不正作出及び供用罪 事務処理を誤らせる目的で、権利義務などに関する一般の電磁的記録を不正に作る

刑法のコンピュータ関連の罪は、「何を対象にしたか」と「何をしたか」で見分けます。 対象が支払用カードの記録で、行為が作る・使う・準備するなら、支払用カードの罪です。

次の問題へ