正解:イ
各選択肢の解説
ア同僚が使える状態にしたので、不正指令電磁的記録の「提供」に当たる。
誤り。「提供」は、ウイルスだと知っている相手に渡して、相手が使える状態にすることです。 「相手に渡す」という日常の語感で選びがちですが、この場面の同僚は事情を知りません。 知らない人のPCで動く状態に置く行為は「供用」として扱われます。
イ事情を知らない同僚のPCで動き得る状態にしたので、「供用」に当たる。
正解。供用は、ウイルスだと知らない人のPCで実行され得る状態に置くことです。 共有フォルダにツールと偽って置き、同僚がいつでも実行できるようにした時点で当てはまります。
ウ自分で作ったプログラムではないので、不正指令電磁的記録に関する罪には当たらない。
誤り。この罪は作成だけでなく、提供・供用・取得・保管も対象です。通称の「ウイルス作成罪」から 作った人だけの罪だと誤解しがちですが、他人が作ったウイルスでも、正当な理由なく 人のPCで実行され得る状態に置けば供用の罪に問われます。
エまだ誰も実行しておらず被害が出ていないので、処罰の対象にはならない。
誤り。供用は「実行され得る状態に置く」ことで成立し、実際に実行されて被害が出ることは 要件ではありません。さらに供用は未遂も処罰されます。被害の有無で業務妨害などの罪と 混同しやすいのですが、この罪は危険なプログラムを広める行為そのものを処罰します。
理解を深めるために
「渡す」と「仕掛ける」は別の行為
ウイルスを仲間に売り渡すのと、何も知らない人のPCに忍び込ませるのとでは、同じ「人の手に渡す」でも 意味が違います。不正指令電磁的記録に関する罪(通称ウイルス作成罪)は、この2つを分けています。 **相手がウイルスだと知っているなら「提供」、知らないなら「供用」**です。
何が処罰されるのか
刑法第168条の2・第168条の3は、正当な理由がないのに行う次の行為を処罰しています。
- 作成・提供: 人のPCで実行させる目的で、ウイルスを作る、または事情を知る者に渡す
- 供用: ウイルスを、事情を知らない人のPCで実行され得る状態に置く(未遂も処罰)
- 取得・保管: 同じ目的で、ウイルスと知って手に入れる、手元に持っておく
法務省の立案担当者による解説は、供用の例として、ウイルスをメールに添付して送る行為や、 Webサイトでダウンロードできるようにして事情を知らない人にダウンロードさせる行為を挙げています。 共有フォルダにツールと偽って置くのも、同僚がいつでも実行できる状態にする点で同じ構図です。 なお、供用の対象は誰が作ったものでもよく、この社員がウイルスと知って受け取った段階では、 取得の罪も問題になり得ます。
混同しやすいものとの違い
| 行為 | 中身 |
|---|---|
| 供用 | 事情を知らない人のPCで実行され得る状態に置く |
| 提供 | ウイルスだと知っている相手に渡し、使える状態にする |
| 作成 | ウイルスを新たに作る(人のPCで実行させる目的があるとき) |
| 取得・保管 | ウイルスと知って手に入れる・持っておく |
見分けどころは、受け取る側が「ウイルスだと知っているか」です。共有フォルダやメールで 知らない人に届く形にしたなら、実行される前でも供用に当たります。