問題 10★★☆

退職が決まった社員が、まだ有効だった自分の管理者アカウントで受注管理サーバに入り、 受注データを消去した。翌朝から受注処理ができなくなり、営業部門の業務が止まった。 この行為に当たる刑法上の罪として、最も適切なものはどれか。

正解:ア

各選択肢の解説

  1. ア電子計算機損壊等業務妨害罪

    正解。業務に使うコンピュータのデータを消す(電磁的記録の損壊)などして、 コンピュータに本来の動作をさせず、業務を妨害する罪です。データ消去で受注処理が止まった この場面がそのまま当てはまります。

  2. イ偽計業務妨害罪

    誤り。これは、うそやだましの手段(偽計)で人の業務を妨害する一般的な罪です。 「業務妨害」という語が共通するので選びがちですが、コンピュータやそのデータを壊して業務を 妨げる行為には、専用の電子計算機損壊等業務妨害罪が置かれ、法定刑も重くなっています。

  3. ウ不正指令電磁的記録に関する罪

    誤り。これは、利用者の意図に反する動作をさせるプログラム(ウイルスなど)を作成・提供・供用・ 取得・保管する罪です。サーバに害を与えた点で連想しやすいのですが、この社員はプログラムを 作ったり仕掛けたりしておらず、管理者の操作でデータを直接消しています。

  4. エ電磁的記録不正作出及び供用罪

    誤り。これは、人の事務処理を誤らせる目的で、権利・義務や事実証明に関する電磁的記録を 不正に作る罪です。データを操作した点は似ていますが、この場面は記録を作ったのではなく 消して業務を止めています。「作る」か「壊して止める」かで分けます。

理解を深めるために

コンピュータを使えなくして業務を止める罪

紙の台帳で仕事をしていた時代なら、台帳を破られれば業務が止まります。いまは台帳の代わりに サーバのデータがあり、それを消せば同じように業務が止まります。こうした コンピュータやデータへの攻撃で業務を妨害する行為を処罰するのが、 刑法第234条の2の電子計算機損壊等業務妨害罪です。

何が処罰されるのか

条文は、手段と結果を次のように組み合わせています。

  • 手段: 業務に使うコンピュータやデータを壊す(消去を含む)、虚偽の情報や不正な指令を与える、その他の方法
  • 結果: コンピュータに使用目的に沿う動作をさせない、または使用目的に反する動作をさせて、人の業務を妨害する

法定刑は5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金で、一般の業務妨害罪(3年以下の拘禁刑または 50万円以下の罰金)より重く、未遂も処罰されます。

この場面では、退職が決まった社員の管理者アカウントがまだ有効だったことが被害の入口になっています。 管理者としては、退職や異動が決まった時点で権限を見直し、最終日には確実に無効化する運用が欠かせません。

混同しやすいものとの違い

罪 何に着目しているか
電子計算機損壊等業務妨害罪 コンピュータやデータを壊す・狂わせることで業務を妨害する
偽計業務妨害罪 うそやだましの手段で、人の業務を妨害する(一般の業務妨害)
不正指令電磁的記録に関する罪 ウイルスなどのプログラムを作る・渡す・仕掛ける・持つ
電磁的記録不正作出及び供用罪 事務処理を誤らせる目的で、権利・義務などの記録を不正に作る

見分けどころは「何をしたか」です。データを消して業務を止めたなら電子計算機損壊等業務妨害罪、 プログラムを作って仕掛けたなら不正指令電磁的記録に関する罪、記録を作ったなら不正作出の罪を考えます。

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