正解:イ
各選択肢の解説
ア取引先とよく似た別のドメインを取得し、そのドメインから送信した。
誤り。似たドメインを使う手口は、そのドメインに自前のSPFなどを設定すれば検査に 合格しえますが、アドレスは正規のものと一致しません。今回は差出人アドレスが 正規のものと明示されているので、この手口ではありません。
イ取引先の担当者のメールアカウントが乗っ取られ、そこから送信された。
正解。本物のアカウントから、本物のメールサーバを通って送られたメールなので、 送信ドメイン認証はすべて合格します。過去のやり取りに返信できたのも、 乗っ取ったアカウントの受信箱を読めたからです。
ウ送信の途中でメールが中継され、本文の口座番号だけが書き換えられた。
誤り。途中で本文を書き換えると、送信元が付けたDKIMの電子署名と内容が合わなくなり、 検証に失敗します。通信経路での改ざんを見抜くことは、DKIMが働く場面そのものです。
エ差出人欄だけを正規のアドレスに書き換え、別のサーバから送信した。
誤り。差出人欄の偽装は、DMARCが差出人欄のドメインとSPF・DKIMで確かめたドメインの 一致を調べるので検出されます。送信ドメイン認証が防ごうとしているのは、 まさにこの種のなりすましです。
理解を深めるために
本物の郵便受けから出された偽の手紙
送信ドメイン認証は、「このメールは本当にそのドメインのサーバから出たか」「途中で 書き換えられていないか」を確かめる仕組みです。言い換えると、送り主の郵便受けが 本物かどうかを見ています。郵便受けそのものを乗っ取られて、そこから手紙を出されると、 検査は「本物」と判定するしかありません。
なぜ乗っ取りだと見抜けないのか
ビジネスメール詐欺(BEC)は、取引先や経営者を装って偽の口座へ送金させる手口です。 攻撃者が取引先の担当者のメールアカウントを乗っ取ると、次のことが起きます。
- 本物のアドレス・本物のサーバから送られるので、SPF・DKIM・DMARCがすべて合格する
- 受信箱を読めるので、実際の請求や商談の流れに合わせた返信ができる
- マルウェアを添付しないことが多く、ウイルス対策ソフトにもかからない
このため技術的な検査が合格しても、振込先の変更が正しいとは限りません。 口座変更のように金銭に関わる依頼は、メール以外の経路(あらかじめ把握している電話番号など)で 取引先に確かめる手順を、業務のルールとして決めておくことが対策になります。
混同しやすいものとの違い
| 手口 | アドレス | 送信ドメイン認証の結果 |
|---|---|---|
| 正規アカウントの乗っ取り | 正規と同じ | 合格する |
| 似たドメインの取得 | 正規と一部違う | 合格しうるが、アドレスで見分けられる |
| 経路上での本文の書き換え | 正規と同じ | DKIMの署名検証で失敗する |
| 差出人欄の偽装 | 表示は正規と同じ | DMARCで不一致が検出される |
送信ドメイン認証が確かめるのは「どこから送られたか」であり、「送った人が本人か」ではありません。 検査を通った前提の問題では、送信元そのものが乗っ取られた可能性を考えてください。