問題 24★★★

経理担当者に、長年の取引先の担当者から、過去のメールに返信する形で「振込先口座が 変わった」と連絡が届いた。差出人アドレスは正規のもので、送信ドメイン認証 (SPF・DKIM・DMARC)の検査にもすべて合格していたが、後に詐欺と判明した。 検査に合格した理由として最も適切なものはどれか。

正解:イ

各選択肢の解説

  1. ア取引先とよく似た別のドメインを取得し、そのドメインから送信した。

    誤り。似たドメインを使う手口は、そのドメインに自前のSPFなどを設定すれば検査に 合格しえますが、アドレスは正規のものと一致しません。今回は差出人アドレスが 正規のものと明示されているので、この手口ではありません。

  2. イ取引先の担当者のメールアカウントが乗っ取られ、そこから送信された。

    正解。本物のアカウントから、本物のメールサーバを通って送られたメールなので、 送信ドメイン認証はすべて合格します。過去のやり取りに返信できたのも、 乗っ取ったアカウントの受信箱を読めたからです。

  3. ウ送信の途中でメールが中継され、本文の口座番号だけが書き換えられた。

    誤り。途中で本文を書き換えると、送信元が付けたDKIMの電子署名と内容が合わなくなり、 検証に失敗します。通信経路での改ざんを見抜くことは、DKIMが働く場面そのものです。

  4. エ差出人欄だけを正規のアドレスに書き換え、別のサーバから送信した。

    誤り。差出人欄の偽装は、DMARCが差出人欄のドメインとSPF・DKIMで確かめたドメインの 一致を調べるので検出されます。送信ドメイン認証が防ごうとしているのは、 まさにこの種のなりすましです。

理解を深めるために

本物の郵便受けから出された偽の手紙

送信ドメイン認証は、「このメールは本当にそのドメインのサーバから出たか」「途中で 書き換えられていないか」を確かめる仕組みです。言い換えると、送り主の郵便受けが 本物かどうかを見ています。郵便受けそのものを乗っ取られて、そこから手紙を出されると、 検査は「本物」と判定するしかありません。

なぜ乗っ取りだと見抜けないのか

ビジネスメール詐欺(BEC)は、取引先や経営者を装って偽の口座へ送金させる手口です。 攻撃者が取引先の担当者のメールアカウントを乗っ取ると、次のことが起きます。

  • 本物のアドレス・本物のサーバから送られるので、SPF・DKIM・DMARCがすべて合格する
  • 受信箱を読めるので、実際の請求や商談の流れに合わせた返信ができる
  • マルウェアを添付しないことが多く、ウイルス対策ソフトにもかからない

このため技術的な検査が合格しても、振込先の変更が正しいとは限りません。 口座変更のように金銭に関わる依頼は、メール以外の経路(あらかじめ把握している電話番号など)で 取引先に確かめる手順を、業務のルールとして決めておくことが対策になります。

混同しやすいものとの違い

手口 アドレス 送信ドメイン認証の結果
正規アカウントの乗っ取り 正規と同じ 合格する
似たドメインの取得 正規と一部違う 合格しうるが、アドレスで見分けられる
経路上での本文の書き換え 正規と同じ DKIMの署名検証で失敗する
差出人欄の偽装 表示は正規と同じ DMARCで不一致が検出される

送信ドメイン認証が確かめるのは「どこから送られたか」であり、「送った人が本人か」ではありません。 検査を通った前提の問題では、送信元そのものが乗っ取られた可能性を考えてください。

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