問題 16★★☆

自社より規模の小さい協力会社にソフトウェアの開発を委託している企業がある。 この企業が、納品物を受け取ったのに代金の支払を先延ばししたり、後から一方的に 代金を減額したりすることを禁止行為として定めている法律はどれか。

正解:ウ

各選択肢の解説

  1. ア民法

    誤り。これは契約全般の基本ルールを定める一般法です。当事者が対等であることを 前提に契約自由を認めるので、代金をいつ支払うかも原則は当事者の合意しだいです。 力の差がある委託取引を名指しで守るには、この上に特別法が要ります。

  2. イ独占禁止法

    誤り。これは市場全体の公正な競争を確保する一般法で、優越的地位の濫用もここで 扱われます。ただし濫用にあたるかの立証が重く、時間がかかります。委託取引に 的を絞って禁止行為を具体的に並べ、素早く是正させるのが特別法の役割です。

  3. ウ中小受託取引適正化法(取適法)

    正解。委託した側に、支払期日を受領日から60日以内に定めて守ることなどを求め、 支払遅延・受領拒否・代金の一方的な減額・買いたたきを禁止行為として並べています。

  4. エ特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律

    誤り。これは大規模なオンラインモールやアプリストアの運営者に、出店者へ取引条件を 開示させ、運営状況を報告させる法律です。同じ力の差のある取引でも、規制の中身は 情報開示による透明化であって、代金の支払遅延を禁止行為として並べるものではありません。

理解を深めるために

対等ではない相手のために、一般法の上に置く法律

契約は本来、対等な当事者どうしが自由に条件を決めるものです。しかし発注する側と 受注する側の規模が大きく違うと、受注側は「支払を待ってほしい」「少し値引きして ほしい」と言われても断りにくくなります。そこで委託取引に限って、やってはいけない ことをあらかじめ具体的に並べておくのが中小受託取引適正化法(取適法)です。

委託事業者に課されること

  • 発注時に取引条件を書面(または電磁的記録)で明確に示す
  • 支払期日を、物品や成果物を受け取った日から起算して60日以内に定め、その日までに支払う
  • 支払遅延、受領拒否、代金の一方的な減額、買いたたき、返品などを行わない
  • 価格の協議を求められたのに応じない、といった一方的な代金決定をしない

この法律は旧・下請法(下請代金支払遅延等防止法)を改正・改称したもので、2026年 1月1日に施行されました。当事者の呼び方も「委託事業者」「中小受託事業者」に 改められています。ソフトウェア開発のような情報成果物の作成委託も対象です。

混同しやすいものとの違い

法律 何を扱うか
中小受託取引適正化法(取適法) 委託取引での代金支払等の禁止行為を具体的に列挙
民法 契約一般の基本ルール(一般法)
独占禁止法 市場全体の公正な競争の確保(優越的地位の濫用など)
特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律 大規模なモール・アプリストア運営者による取引条件の開示

「委託した側」「代金の支払」「規模の小さい取引先」という組合せが出てきたら取適法、 契約の型そのものを問われていたら民法、と読み分けられます。

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