正解:イ
各選択肢の解説
ア個人情報保護法などの関係法令に適合しているかを確かめ、適合していれば導入を決める。
誤り。これは法令に合っているかを確かめるコンプライアンスの確認で、ELSIのL(法的課題)の一部です。 法令に違反しなくても、社員が萎縮する、評価に使われて不公平が生じるといった 倫理的・社会的な課題は残ります。ELSIは3つを合わせて考えます。
イ法令への適合に加え、監視される社員の萎縮や評価での不公平など社会的な影響も洗い出す。
正解。ELSIは新しい技術を社会で使うときに生じる倫理的・法的・社会的課題です。 法令に合うかだけでなく、使われる側が受け入れられるか、不公平を生まないかまで見ます。
ウ実証実験で集中度の推定精度を測り、十分な精度が出ることを確かめてから導入を決める。
誤り。これは技術が期待どおりに動くかの性能評価です。精度が十分でも、 表情を常に見られることへの抵抗感や、推定結果の使い道の妥当性は別の問題として残ります。 ELSIは「動くか」ではなく「社会で使ってよいか」を問います。
エカメラ映像の漏えいや改ざんの起こりやすさと影響を、機密性・完全性・可用性の観点で評価する。
誤り。これは情報セキュリティリスクアセスメントです。映像という情報資産を守る観点で、 担当者として必要な検討ではありますが、守り切れたとしても、 監視そのものが社員や社会に与える影響というELSIの論点は扱えません。
理解を深めるために
「使えるか」「違法でないか」の先にある問い
新しい技術を職場に入れるとき、つい「ちゃんと動くか」「法律に触れないか」の2点で判断しがちです。 ELSI(Ethical, Legal and Social Issues。倫理的・法的・社会的課題)は、その先にある 「この使い方を社会や当事者が受け入れられるか」まで含めて考えるための枠組みです。
なぜ3つをまとめて考えるのか
ELSIは、新しい科学技術が社会で使われるようになったときに生じうる課題を、3つの面から捉えます。
- 倫理的課題(E): 人の尊厳や公平さを損なわないか。表情から内面を推し量られることへの抵抗感など
- 法的課題(L): 法令や制度に合っているか。法律が技術に追いついていない部分はないか
- 社会的課題(S): 社会や当事者が受け入れるか。萎縮、不信、格差を生まないか
この3つは、どれか1つを満たせば残りも満たされる関係にありません。 法令に適合していても、社員が「常に見張られている」と感じて職場の信頼が損なわれれば、 導入は失敗です。だから導入前に、使われる側の影響まで洗い出し、 必要なら当事者の意見を聞いて使い方を決めます。
混同しやすいものとの違い
| 検討 | 何を確かめるか |
|---|---|
| ELSI | 倫理・法・社会の3面から、社会で使ってよいか |
| コンプライアンス | 法令・規程に適合しているか |
| 性能評価(実証実験) | 技術が期待どおりに動くか |
| 情報セキュリティリスクアセスメント | 情報資産の機密性・完全性・可用性が損なわれないか |
選択肢のうち「法令だけ」「精度だけ」「情報の守りだけ」のように1つの面に閉じているものは、 ELSIの検討としては足りません。倫理と社会への影響まで含むかで見分けます。