正解:ウ
各選択肢の解説
ア修正版が届くまで問題の記録は開いたままにし、回避策は修正版の適用まで調査担当者だけで管理する。
誤り。記録を開いたままにするのは正しいのですが、回避策を調査担当の中に留めると、 利用者は暗号化に失敗したまま平文のファイルを扱い続けます。分かった回避策は、 問合せを受ける側が使えるようにして初めて効果が出ます。
イ根本原因が分かったので問題は解決済みとして記録を終え、以後の問合せは個別のインシデントとして調べる。
誤り。原因が分かることと、原因が取り除かれることは別です。不具合は修正版が 適用されるまで残るので、問題を閉じると、同じ問合せのたびにサービスデスクが 一から調べ直すことになります。
ウ原因と回避策を既知の誤りとして記録し、サービスデスクが同じ問合せに回避策で応えられるようにする。
正解。根本原因と回避策が特定できたが恒久的にはまだ解決していない問題は、 既知の誤りとして記録して共有します。サービスデスクがすぐ回避策を案内でき、 暗号化されないファイルが残る期間を縮められます。
エ開発元から試験中の修正版を取り寄せ、変更の手続を経ずに全利用者の端末へすぐに適用する。
誤り。これは恒久対策を急ぐ発想ですが、端末への修正版の適用は変更管理で影響を 評価してから行う変更です。試験中のものを手続なしで全台に入れると、 別の不具合を全社に広げるおそれがあります。
理解を深めるために
「原因は分かった、まだ直っていない」を共有する
故障した踏切に「当面は迂回路をご利用ください」と看板を立てるようなものです。 工事は来月でも、迂回路を知らせておけば通る人は困りません。 問題管理で根本原因と回避策が分かったのに恒久対策がまだ終わっていない状態を、 既知の誤りとして記録し、問合せを受ける人が使えるようにします。
既知の誤りは何のために記録するのか
JIS Q 20000-1:2020 では、既知の誤りを「根本原因が特定されているか、又はサービスへの影響を 低減若しくは除去する方法がある問題」という趣旨で定義しています。扱いは次のとおりです。
- 問題の記録は、恒久的に解決するまで閉じない
- 回避策は既知の誤りとして記録し、サービスデスクやインシデント管理の担当が使えるようにする
- 修正版の適用など恒久対策に設定やソフトウェアの変更が伴うなら、変更管理を通す
今回は、暗号化の失敗がそのまま「暗号化されないファイルが社内に残る」ことにつながります。 回避策を早く行き渡らせることが、情報セキュリティ上の損失を小さくする近道です。
混同しやすいものとの違い
| 用語 | 何をするか |
|---|---|
| 既知の誤り | 原因・回避策が分かった未解決の問題を記録し、共有する |
| 問題管理 | インシデントの根本原因を突き止め、再発を防ぐ |
| インシデント管理 | 起きた事象に対処し、サービスを早く元に戻す |
| 変更管理 | 変更の影響を評価し、承認してから実施する |
試験では「原因は分かったが修正はまだ」「回避策がある」という記述が並んだら、 既知の誤りとして記録・共有する場面だと読み取ります。