正解:ウ
各選択肢の解説
ア上場会社などが、業務の効率性や法令遵守を含む内部統制全般の有効性を評価し、開示する制度。
誤り。評価と監査の対象を広げすぎています。内部統制の目的は業務の有効性・効率性や 法令等の遵守など4つありますが、J-SOXが評価と監査を求めるのは財務報告に係る内部統制です。 2023年の基準改訂で目的の一つが「報告の信頼性」に広がった後も、この制度の対象は財務報告のままです。
イ上場会社が、原則ごとに実施するか、実施しない理由を説明するかを選んで開示する企業統治の指針。
誤り。これはコーポレートガバナンス・コードの「コンプライ・オア・エクスプレイン」の説明です。 どちらも上場会社が対象で開示を伴うため混同しやすいですが、コードは法的な強制力のない指針、 J-SOXは金融商品取引法で報告書の提出と監査が義務付けられた制度です。
ウ上場会社などの経営者が財務報告に係る内部統制を評価して報告書にまとめ、監査人の監査を受ける制度。
正解。経営者が自ら評価した結果を内部統制報告書として有価証券報告書と併せて提出し、 その報告書の適正さを外部の監査人(監査法人など)が監査します。「経営者の評価」と「監査人の監査」の二段構えです。
エ会社法に基づき、大会社の取締役会が、業務の適正を確保するための体制の整備を決定する仕組み。
誤り。これは会社法が求める内部統制システムの整備の説明です。どちらも「内部統制」と呼ばれるため 混同されますが、根拠法が違います。会社法は体制づくりの決定を求め、J-SOXは金融商品取引法に基づき 財務報告に係る内部統制の評価結果の報告と、監査人による監査を求めます。
理解を深めるために
決算書の数字を支える仕組みを、経営者が点検して外部がお墨付きを与える
投資家は、上場会社の決算書を見て株を買うかどうかを決めます。その数字が誤っていたり 粉飾されていたりすれば、市場そのものが信用を失います。そこで「決算書が正しく作られる 仕組みがきちんと働いているか」を、まず経営者が自ら点検して報告し、その報告を外部の 監査人が確かめる。これが**内部統制報告制度(J-SOX)**です。
J-SOXという呼び名は、米国で企業の会計不祥事を受けて制定されたSOX法 (サーベンス・オクスリー法)の日本版という意味の通称です。
制度の流れ
- 根拠は金融商品取引法。上場会社などが対象になる
- 経営者が、財務報告に係る内部統制の有効性を評価する
- 評価の結果を内部統制報告書にまとめ、有価証券報告書と併せて提出する
- 外部の監査人(公認会計士や監査法人)が、その内部統制報告書を監査する (新規上場から一定期間は監査が免除される特例がある)
評価と監査の基準は、金融庁の企業会計審議会が定める「財務報告に係る内部統制の評価及び 監査の基準」です。2023年に改訂され、2024年4月1日以後に始まる事業年度から適用されています。 この改訂で内部統制の4つの目的の一つが「財務報告の信頼性」から**「報告の信頼性」**に 改められましたが、J-SOXが評価と監査の対象とするのは引き続き財務報告に係る内部統制です。
混同しやすいものとの違い
| 用語 | 中身 |
|---|---|
| 内部統制報告制度(J-SOX) | 金融商品取引法に基づき、経営者が財務報告に係る内部統制を評価・報告し、監査人が監査する |
| 内部統制全般 | 業務の有効性・効率性、報告の信頼性、法令等の遵守、資産の保全の4つを目的とする仕組み |
| コーポレートガバナンス・コード | 上場会社向けの指針。原則を実施するか、しない理由を説明するかを選ぶ |
| 会社法の内部統制システム | 大会社などの取締役会が、業務の適正を確保する体制の整備を決める |
見分けるときは「根拠が金融商品取引法か」「対象が財務報告か」「経営者の評価と監査人の監査が セットになっているか」の3点を見ます。