問題 11★★☆

業界首位のE社は、主要顧客の要望に応えて製品の高性能化を続けてきた。ところが、 性能は劣るが安価で手軽な新興企業の製品が低価格帯から広がり、やがてE社の顧客も奪い始めた。 この現象を説明する考え方として最も適切なものはどれか。

正解:イ

各選択肢の解説

  1. アイノベータ理論のキャズム

    誤り。これは新しい製品が、新しもの好きの初期採用者から慎重な多数派へ 広がるときに越えにくい溝のことです。新興企業の製品が普及していく場面なので 連想しがちですが、既存の優良企業が敗れる理由を説明する考え方ではありません。

  2. イイノベーションのジレンマ

    正解。優良企業が既存顧客の声に応えて性能を高めるという合理的な判断を重ねた結果、 当初は魅力が小さく見えた安価な新技術への対応が遅れ、市場を奪われる現象です。

  3. ウダーウィンの海

    誤り。これは事業化した製品が、競合との生存競争を勝ち抜けずに産業として定着できない 段階の壁です。「競争に敗れる」点が似ていますが、既に首位を築いたE社が 新しい種類の製品に置き換えられる話とは段階も原因も違います。

  4. エ製品のコモディティ化

    誤り。これは製品の機能や品質の差がなくなり、価格だけで選ばれるようになる現象です。 価格の話が出るので迷いますが、E社と新興企業の製品は性能に差があり、 同質化したわけではありません。性能で劣る製品に置き換わる点が違います。

理解を深めるために

正しい経営をしていたのに負ける

E社は怠けていたわけではありません。大切な顧客の声を聞き、利益の出る高性能品に投資する。 経営として当然の判断です。ところが、その「正しさ」ゆえに、利益が薄く顧客も求めていない 安価な製品を後回しにし、気づいたときには市場を奪われていた。この逆説がジレンマと呼ばれる理由です。

なぜ優良企業ほど対応が遅れるのか

ハーバード・ビジネス・スクールのクレイトン・クリステンセンが、1997年の著書で示した考え方です。

  • 持続的イノベーション — 既存顧客が評価する性能を高める改良。優良企業が得意とする
  • 破壊的イノベーション — 性能は劣るが、安さや手軽さといった別の価値で、低価格帯や新しい顧客から広がる
  • 性能向上が顧客の必要を超えると、「そこそこの性能で安い」製品で十分になり、上位の顧客まで移っていく

既存顧客を大切にする判断の積み重ねが、破壊的な変化への対応を遅らせるのが核心です。

混同しやすいものとの違い

用語 中身
イノベーションのジレンマ 優良企業が合理的な判断を重ねた結果、破壊的な新技術に市場を奪われる
キャズム 新製品が初期採用者から多数派へ広がるときの溝
ダーウィンの海 事業化した製品が競争に勝ち残り産業になるまでの壁
コモディティ化 製品の差がなくなり価格競争になること

試験では「既存の優良企業」「性能は劣るが安い新製品」「顧客を奪われる」の三つがそろったら、 イノベーションのジレンマを選びます。

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