問題 12★★★

F社は世界初の高精度センサーを開発して特許も取得し、資金を集めて量産と発売にこぎ着けた。 しかし、顧客が何に困っているかを確かめないまま製品化したため、ほとんど売れなかった。 イノベーションの観点で、F社に欠けていたものとして最も適切なものはどれか。

正解:ウ

各選択肢の解説

  1. ア他社にない技術の新規性

    誤り。F社は世界初の技術を開発しており、新規性は十分に備えていました。 「イノベーション=技術革新」と捉えると選びがちですが、 新しい技術があること自体は、イノベーションが成り立つための条件の一部にすぎません。

  2. イ特許による知的財産の保護

    誤り。F社は特許を取得しています。特許は、生み出した技術を他社にまねされないよう 守る手段です。守りを固めても、その技術を必要とする顧客がいなければ 売上にはつながらないので、今回の失敗の原因ではありません。

  3. ウ顧客や社会にとっての価値創出

    正解。イノベーションは新しい技術そのものではなく、それによって顧客や社会に 価値を生み出して初めて成り立ちます。F社は顧客の困りごとを確かめず、価値を生めていません。

  4. エ死の谷を越えるための事業化資金

    誤り。死の谷は、試作から事業化に進むための資金や体制が付かない壁です。 F社は資金を集めて量産と発売まで進んでいるので、この谷は越えています。 つまずいたのは、発売した製品が顧客に選ばれなかった点です。

理解を深めるために

発明とイノベーションは違う

どれほど優れた技術でも、使う人がいなければ世の中は何も変わりません。 新しい技術を生むことが「発明」なら、それを顧客や社会の役に立つ形にして 価値を生み出すところまで届けるのが「イノベーション」です。F社は発明には成功しましたが、 イノベーションには至りませんでした。

イノベーションの中心にあるのは価値

イノベーションの国際規格であるISO 56000シリーズでも、イノベーションを 「価値を実現する、新しい又は変化したもの」という趣旨で定義しています。 技術の新しさは手段であり、目的は価値の創出です。

  • 顧客が抱える課題や、まだ満たされていない要望を見つける
  • 技術やアイデアを、その課題を解決する製品・サービスや仕組みに結び付ける
  • 顧客に選ばれ、使われることで価値が実現する

F社は一つ目を飛ばしたため、技術・特許・資金がそろっていても売れませんでした。

混同しやすいものとの違い

観点 役割 F社の状況
価値創出 顧客や社会の役に立つ価値を生む 欠けていた
技術の新規性 他社にない新しさをもつ 備えていた
知的財産の保護 技術をまねされないよう守る 備えていた
死の谷の克服 事業化に必要な資金・体制を得る 越えていた

試験では、問題文に書かれた「できていること」を一つずつ消していくと、 残った欠落がそのまま答えになります。

前の問題へ次の問題へ