問題 19★★★

F社の研究所は有望な研究成果を数多く上げているが、事業部門から「どの顧客の どんな課題に役立つのか見えない」と言われ、製品開発のテーマに採用されない研究が 続いている。F社がこの状況を打開する取組みとして、最も適切なものはどれか。

正解:ア

各選択肢の解説

  1. ア研究の初期から事業部門と顧客の課題を共有し、製品化を見据えてテーマを選ぶ。

    正解。研究成果が製品開発に進めない壁は魔の川と呼ばれます。 技術(シーズ)と顧客の課題(ニーズ)を早い段階で結び付けることで、 開発テーマとして選ばれる研究にしていく取組みです。

  2. イベンチャーキャピタルなど社外から資金を集め、量産の設備と人員を整える。

    誤り。これは試作品はできたのに量産や販売の投資が付かない、死の谷を越える取組みです。 資金の問題として混同しやすいのですが、F社の研究はまだ開発テーマにすら 選ばれておらず、量産を考える段階の手前にいます。

  3. ウ発売した製品の機能で競合との差別化を進め、販路を広げてシェアを確保する。

    誤り。これは事業化した製品が競争を生き抜いて産業として定着するための、 ダーウィンの海を越える取組みです。製品を市場に出した後の話であり、 研究成果が製品にもなっていないF社の段階とは合いません。

  4. エ新しもの好きの利用者向けの訴求から、実績を重視する利用者向けへ切り替える。

    誤り。これは初期採用者から多数派へ普及が止まるキャズムを越える取組みです。 販売が始まった製品の普及の問題であり、社内で研究テーマが 開発に進まないというF社の課題には当てはまりません。

理解を深めるために

「すごい技術」が「売れる製品の種」になれない壁

研究者にとって画期的な成果でも、事業部門から見て「誰が買うのか」が分からなければ、 開発にお金と人をかける決断はできません。こうして研究のまま眠ってしまう関門を、 技術経営(MOT)では魔の川と呼びます。

段階ごとに、越え方が違う

MOTでは、技術が産業になるまでを四つの段階と三つの関門でとらえます。

研究 →〔魔の川〕→ 開発 →〔死の谷〕→ 事業化 →〔ダーウィンの海〕→ 産業化

関門ごとに足りないものが違うので、打ち手も変わります。

  • 魔の川 — 足りないのは「使い道」。研究の出口を意識し、ニーズと結び付けてテーマを選ぶ
  • 死の谷 — 足りないのは「資金と体制」。外部資金の導入や量産体制の整備で越える
  • ダーウィンの海 — 足りないのは「競争力」。差別化や販路の確保で生き残る

F社の問題は技術の出来ではなく、研究と顧客の課題がつながっていないことです。 研究の段階から事業部門と顧客の課題を共有すれば、成果が開発テーマとして 選ばれやすくなります。

混同しやすいものとの違い

関門 どこの壁か 越えるための取組み
魔の川 研究 → 開発 ニーズと結び付けてテーマを選ぶ
死の谷 開発 → 事業化 資金調達、量産体制の整備
ダーウィンの海 事業化 → 産業化 差別化、販路の確保
キャズム 普及の途中 実績重視の多数派への訴求

試験では、問題文の会社が「どの段階で止まっているか」を先に確かめます。 研究が開発に進まないなら魔の川、その打ち手はニーズとの結び付けです。

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